7月に三越劇場で上演される北翔海莉さん主演の「牡丹灯籠」、藤間勘十郎さんとのご縁が続きますね。牡丹灯籠って名前は聞いたことあるけどそういやどんな話か知らない、というので調べてみました。が、難しい~~!登場人物多すぎィ~話詰め込みすぎィ~!とにかく複雑で一回読んだだけでは理解できませんでした。今だったら「小説の書き方講座」でダメ出し食うレベル。そんな訳で自分なりに噛み砕いてまとめてみたけどせっかくなんで記事にしたという次第です。いつもは「ネタバレ嫌な人は回避してね」と注意書きするところですが、今回に限っては予習して臨む方がいいかもしれない。その位訳分かんないですw
まず、牡丹灯籠って怪談話として知られてますが幽霊が出てくるのは長い話の一部でどちらかというと仇討ち話のウエイトが大きいのが意外でした。怪談パートと仇討ちパートがそれぞれ独立した話として並行して進み、あるエピソードで2つが1つにまとまるという構造なんです。牡丹灯籠とは怪談パートで登場するアイテムなんですが全体から見れば怪談パート自体が枝葉のエピソードなんですよね。ここんとこのバランスがよく分からない。
では早速仇討ちパートから行きます。とある武士飯島平左衛門は泥酔していた黒川考蔵に絡まれ思わず黒川を斬ってしまった。これがそもそもの発端。月日が経って黒川の息子の考助が親の仇と知らずに飯島家の家来になる。平左衛門は後に気付いたが黙って面倒をみてやった。さて平左衛門の妾のお国というのが出て来ますがこれがとんでもない悪女でして。お国が宮邊源次郎という男と浮気しているところを考助が発見して喧嘩に。お国は考助を消そうとしますが失敗に終わります。
次に怪談パート行きますよ。考助が飯島家に仕えるようになった頃と時を同じくして、平左衛門の娘お露は医師山本志丈の紹介でイケメン浪人萩原新三郎と知り合い2人はラブラブに。でも恋煩いでお露が死んじゃった(昔の話って恋煩いで死ぬことよくあるけど何じゃそりゃー!っていつも思うw)。なのに夜な夜な新三郎の前に現れるお露。有名な「下駄の音がカラーンコローン」というフレーズはこの場面ですね。お付きの女中お米が持ってるのが牡丹灯籠。ここからタイトルが来ているというわけです。新三郎は人相見から死相が出ていると告げられお露が幽霊であることが判明。このままでは死んでしまうので(好きで好きで死んでも会いたいから出てきたのに相手を殺してしまうとは何と皮肉な。フィクションに慣れた現代人の我々にとっては人外との恋もいいじゃんと思ってしまうのですが)お札と仏像を用意して家に入って来れないようにした。ここでまた新キャラが出てきます。伴蔵と妻のお峰。このお峰が北翔さんの役ですね。2人がお露に百両払えばお札を剥がしてやると持ちかけた。お露は実家から百両を持って来て交渉成立。随分と行動力のある幽霊ですねw 伴蔵がお札を剥がして新三郎は死んでしまったとさ。
さて、飯島家では百両がなくなって大騒ぎです。まさか幽霊になった娘が持って行ったとは誰もつゆ知らず。お国はこれを利用しようと考え考助に罪をなすりつけようとします。ここで怪談パートと仇討ちパートがつながるんです。ここからは考助メインで話が進みます。しかし怪談パートの人物も関係してくるので分かり辛くなるのです。
平左衛門の機転で考助の疑いは晴れたが、考助は間男の源次郎を討とうとして誤って平左衛門に深手を負わせてしまった。平左衛門は自分が親の仇であることを教え考助を逃した。平左衛門は源次郎を殺そうとするが逆に殺されてしまう。お国と源次郎は飯島家の金品を盗んで逃走。考助は平左衛門の仇を討ちにお国と源次郎を追ったのだった。産みの親より育ての親ってことですかね。
ここから本格的に仇討ちの話となりますが、怪談パートで出てきた伴蔵とお峰夫婦が再登場。2人は悪事の発覚を恐れ江戸を離れ栗橋宿(今の埼玉県の辺り)で商売を始めたら大当たり。羽振りが良くなった伴蔵は外に女を作って遊び呆けるように。この相手が何とお国!偶然すぎィ!お峰は嫉妬に狂って事実を漏らしそうになる。事実が発覚するのを恐れた伴蔵はお峰を殺してしまった。そしたら今度はお峰が幽霊に。店の使用人に乗り移ってうわ言のように伴蔵の悪事を喋る。使用人を診てもらうために呼んだ医者がお露と新三郎を引き合わせた山本志丈!またまた偶然すぎィ!仕方ないので伴蔵は志丈に事情を打ち明ける。そこへお国の情夫の源次郎がゆすりに来たが撃退。伴蔵と志丈は江戸に帰った。
江戸に戻った伴蔵は志丈を始末したがそこへ考助が通りかかり捕らえられる。またまたまた偶然すぎィ!考助はお国達を見失っていたが手相見の先生(新三郎に死相があると言った人と同じ)を訪ねたら何と幼少時に別れた母おりえと再会!そして衝撃の事実が発覚!お国はおりえの再婚相手の連れ子で、源次郎と宇都宮に隠れているんだって!またまたまたまた…(無限)偶然すぎィ!おりえから情報ゲットした考助は宇都宮へ向かうがおりえはお国と源次郎を逃してやる。まあ今は義理の娘な訳だし夫に義理立てしたのかしら。そのことを考助に告げおりえは自害。何だかんだで最後はお国達を見つけ考助は本懐を遂げたのでした。というお話。
時系列としては、平左衛門が考助の父を斬ってから20年後くらいに考助が家来になりそれと同時期に新三郎とお露の怪談話があり、考助が仇討ちを完遂するまで更に1年ほどかかるということらしい。って説明で分かります?私は何度も読み返してやっと理解できたくらいで、初見だと無理無理無理ィ!ってなりますw それに偶然が多すぎておいおい!と突っ込みたくなります。
キャストに目を向けると純情可憐なお露と毒婦のお国が一人二役というのが面白いですね。何らかの意図があるんでしょうね。元々のお話だと考助を中心に据えた仇討ち話に見えるけど主演の2人が伴蔵とお峰夫妻であることを考えると台本に手が加えられるのかもしれません。北翔さん演じるお峰は根からの悪人でなく、元々は夫のために甲斐甲斐しく働く妻だったのが欲に目が眩んで「お露の相談に乗る代わりに大金せしめましょうよ」と夫をそそのかしたのが不幸の始まりということらしい。純粋な悪よりこういう役の方が彼女にとって演じやすいかも。考助が恐怖時代とふたり阿国でもご一緒だった市瀬さんなのが楽しみ。殺陣シーンもありそう。
これは明治時代に生まれた創作落語(落語と言っても面白い話ではなく怪談話というジャンル)で、作者の三遊亭圓朝は当時25歳だったらしい。若い!落語の分野だけでなく書や絵画なども得意でマルチな才能の持ち主だったようです。中国の怪奇小説が元になっていて、日本の幽霊は元々足がないのに「下駄の音がカラーンコローン」とお露に足があるのもその影響だとか。そういや怪談パートは同じく中国の小説を元にした上田秋成の「雨月物語」と似てるなと思いました。人外の女が人間の男を好きになるというパターンが共通してます。でも牡丹灯籠はその後の仇討ちや裏切りといった人間のドロドロした話が主になっていて「中国の麺料理が魔改造されて日本でラーメンになりました」みたいな趣がある。また「本当に怖いのは死んだ人間より生きた人間」というのが大きなテーマなってますよね。この普遍的なテーマが現代でも度々上演される演目となっている所以なのかもしれません。色々掘り下げて調べたら色々な情報が出てきてほほーとなったので文章にまとめたところそれなりのボリュームになりました。これがどんな味付けになっているか楽しみであります。実際観たらまた感想書きますね。