2016年に望海風斗さん主演で上演した舞台を男女キャストで上演するらしく、それを機にWOWOWで宝塚版をやってたのを録画しました。評判は前から聞いてて興味あったので渡りに船だったのですが面白いですね!この記事書くために2回リピートしてしまった!主演の望海さんもいいんですが、カンパニー全体の熱量が映像越しでも何かこう、伝わってくるんですよね。こういう舞台に遭遇したいもんですね。
今まで漠然と考えていてブログやツイッターでも仄めかしてきたけど今回確信に至った事をズバリ言っていいですか?望海さんって中二病キャラ本当にハマりますね(爆)!!この役柄演じさせたら右に出る者がいないと言っても過言でないと思う(あっファンの人石投げないでっこれでも褒めてるつもりなんだから)!
まずは簡単なあらすじ。舞台は近世のスペイン。プレイボーイで名を馳せるドン・ジュアンは欲望赴くままに女を貪り続ける日々。彼の身を真剣に心配する友人や、彼のために修道院から出て結婚した妻の懇願もせせら笑って受け流し悪徳の限りを尽くす。ある日騎士団長の娘を拐かし、娘を汚された事を知った父親と決闘して彼を殺めてしまった。騎士団長は「愛がお前の身を滅ぼすだろう」と死ぬ前に謎の言葉を残し、やがて亡霊となり彼にまとわりつくようになった。
最初のドン・ジュアンがとにかく悪~~いんですよ。これでも宝塚用に緩和しているらしいけど(元はフレンチミュージカルらしい)ガムをクチャクチャポイするかのように女を食っては捨て食っては捨ての日々。自分のせいで修道院を出て結婚した妻のエルヴィラも飽きたら捨て、彼女が「私こんな事だってできるのよ!」と挑発のために服を脱いで男と交わるのも面白がって眺めるだけ。騎士団長を殺めた時だって反省の色ナッシング。んまー女性の敵!!人類の敵!!!なのになぜか女達は彼を憎みながらも求めてしまうという不条理。どうしようもない男だけど女達が焦がれるのもむべなるかなと思わせてしまう魅力がある。ここんとこ女性が演じてるから非道さが緩和されてる気がするんですよね。男性だと場合によってはシャレにならんこともあるんじゃないかしら。あとイケメン無罪だからね望海さん端正なお顔だし仕方ないね(おい)。人は誰でも法や道徳や倫理のくびきから逃れて自由に振る舞いたいけど身を滅ぼすのが怖いから躊躇しているところを、神も悪魔も恐れず欲望のままに突き進む彼の姿にある種の憧れを抱いているのかなと解釈しました。キリスト教を知ってると別の見方もできそうだけど。
そんなドン・ジュアンは、亡霊となった騎士団長の計らいで女彫刻家マリアと出会います。マリアは騎士団長の石像を作ってくれと市長から依頼されます。何でもドン・ジュアンは金持ち貴族の坊ちゃんで悪事を働いても捕まらないからせめて像を作って事件を忘れぬようにするんだと。マリアの婚約者ラファエルは「女は家に入ってろ。君のためを思って言ってるんだよ」とプチ束縛男ですが、マリアは自分が誇りとしている仕事を尊重してもらえなくてモヤモヤ。その婚約者が戦争に行ってる最中にドン・ジュアンと遭遇。彼ってどんな人だろう?と考えていた時に本人が突然現れたのでびっくり。彼は素直に彼女の作品を賞賛、お互い「今までの人とは違う」という予感を持ち相手に興味を示します。「殺人なんて恐ろしい事をする人には見えない。なぜあんなことを?」「決闘だったからやらなければ俺がやられてた」「そうなの(ホッ)」いやいや殺した時悪びれる様子なかっただろw!マリアもそんな説明で納得するなよ!言い忘れたけどこの作品ツッコミ所多いです。謎の熱量でそれも魅力に変えて乗り切ってますが一歩間違うと思わず真顔になってしまいそうな危険性も孕んでます。
ここでドン・ジュアンは初めて「愛」を知るんですね。「何だ?この胸の疼きは!?これが愛というものなのか?」初恋に戸惑う思春期の少年みたいにうろたえるんです。ある意味ピュア。この世の何もかもを知り尽くしたと思ってたのにその実何も知らなかったことに純粋に驚いて愛を渇望して本能の赴くまま行動して何をも寄せ付けない狂気すら孕んでて…って中二病のキャラみたいじゃん!そのうち邪気眼出てきそうだぞ(言い過ぎ)!とにかくヤリ◯ンの癖に初々しい童貞ぽさすら滲み出て、そのアンバランスさが魅力に変わる。望海さんこの辺の表現が優れてます。ロベスピエールやエリックの時も思ったけど中二病と童貞ぽさ、純粋故の狂気がうまいね。
普段はすぐに手を出してしまうのに何もせず退散して、でもまたマリアに会いたくて騎士団長像の除幕式にのこのこ顔を出します。当然非難轟々。でもそんなことはお構いなし。「マリアに会わせてくれ。像に跪けば会わせてくれる?ほい(十字を切る)」てな感じでマリア以外目に入らない。そこにマリアが登場します。お前はこの場にふさわしくない、出てけ!とドン・ジュアンが罵倒されるのを見て「ここに彼がいてはいけない法はないわ!この像のせいというなら壊してやる!」と自分が精魂込めて彫った像を壊してしまいます!自分の仕事が婚約者に認めてもらえない~と悩む程誇りにしてたはずなのにそんなに簡単に壊しちゃっていいの?それに意外に怪力なんだね!?一部始終を見たドン・ジュアンは「君は一体何なんだ…」と呟くのですがお前が言うな!!!つーか君たち似た者同士のお似合いカップルだよ!
とまあ、ツッコミながら見ていたのですが謎のパワーで引き込まれてしまうw 2幕からは2人キャッキャウフフの場面から始まります。周りからは白い目で見られますが「俺が変わった事をみんなが知れば認められるよ」虫が良すぎて目も当てられない…それでも亡霊はまだ付きまとってくる。「マリアと会わせてくれたのは感謝するけどいつまでいるんだよ!」殺された恨みで亡霊にまでなったのにただ女の子を紹介するだけで終わるはずねーべよ。そんな中ラファエルはまさか婚約者がそんなことになってるとは知らず戦場で修羅場の真っ只中、この世の地獄を見てるというのに、2人は文字通り朝チュン。更に「この街を出て潮騒の音が聴こえる海の側に引っ越して共に暮らそう」なんて着々とフラグを立てます。やがてラファエルが帰還して予想通りの展開に。ドン・ジュアンを見た途端逆上して決闘を申し入れます。ここでマリアに婚約者がいたことを聞かされたドン・ジュアンの反応が面白くて「何だ…?この初めて味わう感覚!?これが嫉妬というものか!」そうだよお前が他人に散々味わせてきた感情だよ!こんな小っ恥ずかしいセリフ望海さん演じる中二病キャラでないと上滑りするだけです!演る人にとっては浮いてしまいそうな場面だけど、彼女がやると妙にハマって癖になる。
ここでせっかちな私は「早く決闘しろよ」と思ってしまったのですが色んな登場人物が「愛とは~」と歌ったりうだうだ語るので停滞って程じゃないけど少し止まるんですよね。この辺普段親しんでるBWやWEのミュージカルとは違って展開が独特だと思いました。勢いで突っ走ったり逆にじっくり説明したり。最後はご想像の通りハッピーエンドにはならないんですが、「お前が死んでも誰も悲しまない」と言われていたドン・ジュアンが愛に殉じて憎まれながらも惜しまれる死に方をできたのはトゥルーエンドなのかなと思いました。エリザベートも最後ルキーニに刺されて死にますが「ようやく解放されたねよかったね」と私は思うんです。その時の気持ちと似ていました。
散々書いた通りこの作品は望海さんの占めるウエイトが大きいのですが脇キャラも個性豊かというか濃くて魅力的。影のように付きまとう亡霊の騎士団長。香綾しずるさんの怪演が光ってます。本当怖いのよ。別箱公演だとある程度番手に左右されないキャスティングがあるので「この人こんな魅力があるんだ」と新しい発見があっていいですね。人を殺めた潜在的な罪悪感からドン・ジュアン自身が作り出した幻影という解釈も可能なこのキャラ、今度上演するバージョンだとクラブセブンで見たばかりの吉野圭吾さんが演るそうですよ。これはかなりおいしい役ですよ!ドン・ジュアンの心を支配するキーパーソンだし出番も多い。チケット取って観たいと一瞬思いましたが主演ジャニーズだしチケットないですね…あとはドン・ジュアンのためを思って諌めたり説得したりする誠実で実直なドン・カルロ。彩風咲奈さんですがこれもおいしい!破天荒な主人公の側にいる常識人の友人というただでさえ魅力的なポジションなんですが、一部の界隈のお嬢様方が勝手に掛け算をしそうな怪しい雰囲気が漂ってる…ような気がする。多分演出家の意図が入ってるんじゃないかなあ…と邪推してます。だって演出次第でどんな解釈もできるようになってるんだもの。例えばドン・カルロがエルヴィラを好きになるとかそんな見せ方も可能だと思う。でもこの舞台では、妻の境遇を気遣ってあれこれ奔走するけど本当はドン・ジュアン自身のためだよね?な匂いがプンプンするんですよね。エルヴィラはドン・カルロに一切惹かれないし、彼もそれを期待する節はない。一貫してドン・ジュアンを心配する訳です。こりゃ深読みされても仕方ないかも…そういや「ひかりふる路」のロベスピエールとダントンの関係にも少し似てますね。中の人同じだし演出家も同じ。何となくだけど「ひかりふる路」は「ドン・ジュアン」と被るところがあると思うのは私だけ?
あと舞台を彩るフラメンコがいいんです。ひたすら「愛とは~」「愛とは~」と問い続ける独特の世界観にマッチしてて、これで棒立ち歌唱だったら夢から醒めてしまうけどミュージカルはダンスもなくっちゃね!派の私としては嬉しかったです。主役の望海さんは勿論美穂圭子さんなども出演していて耳も幸せになります。個人的に注目している永久輝せあさんも出番が多くてとにかく私得の舞台でした。
ドン・ジュアンが亡くなった後、マリアはどうなったの?
それが知りたい。出来ればロミジュリのように二人で一緒に天国へ行く…。私の勝手な想像💧そうなればいいな、と😔
コメントありがとうございます。あの後どうなったんでしょう。いずれにせよマリアはあれ以上の恋愛はできなかったでしょうね。敢えて観客の想像にゆだねることで余韻が残りますね。