「家なき子へのプロポーズ」感想

さちみりほ先生のハーレクイン作品「家なき子へのプロポーズ」単行本刊行記念に特集記事書きます〜ドンドンパフ♪前にも一度他の作品と共に短いレビューを書いたり、Twitterでちょこちょこ感想買いたけどまとめてどーんと魅力を語りたくなって。なぜこの作品だけ特別なのか?ズバリ私のお気に入りだから!気に入ってた作品が単行本になって嬉しいんです。もちろん全部いいんだけど、他にも好きな作品たくさんあるんだけど、もしかしたら一番読み返してるのはこれかも。ひとりBSマンガ夜話(覚えてる人いる?)みたいな語りをネタバレ配慮せず(ここ重要!)もしかしたら前にも同じこと言ってるかもしれないけど、つらつら書いていこうと思います。

まず簡単なあらすじ。かつて天才ピアニスト少女として一世を風靡したノエルは21歳になった今、栄光は消え失せ世間にも忘れられ困窮した生活を送っていた。ステージママとして娘を売り出した母も2年前に版権と通帳を持って逃げ、1人ぼっちになった彼女は自宅を競売にかけていた。そこへ自宅を買いたいとやって来たのはリゾート経営会社の御曹司イーサン。ノエルのファンと名乗る彼は彼女の窮状を見て親を見返すために契約結婚を持ちかける。彼も、愛人と家を出たはずが最近ふらりと戻って来た父親に経営権の一部を取られたくない事情があり、そのためには結婚して社長である祖父から一人前として認められなければならなかった。迷いながらもノエルは了承する。自分の母がイーサンの父親の愛人だったとも知らずに。

契約結婚ネタはハーレクインあるあるなんですよ。ロマンスばかり読んでると現実でもしばしば起こるような気が……ねーよ!現実はこんな面倒くさいことしません!題材としては使い古されてるので、調理の仕方でいかにおいしく仕上げるかがコツなんですが実は原作も読んでみたんです。そしたら全然違う!正直言ってコミカライズの方が百万倍くらいいです!まず原作では最初にイーサンの企みが100%ノエルに明かされます。「君のお母さんは僕の父親の愛人だったんだよ」と。これでは父親に会った時ノエルがイーサンの元を離れる理由がはっきりしない。自分の存在が父親に対する当て付けだったことに傷ついたかららしいけどそんなの最初から分かってたやんとなってしまう。あと原作ではイーサンノエルのことを否定しまくりです。あれがダメこれがダメ結構ダメ出ししてます。そして!原作はかなりエローいですw!後半なかよし(婉曲表現)ばかりです!コミック版はピュアラブの意味のパールというジャンルらしいけど原作はどピンクですw 一番笑ったのはラスベガスで簡単な式を挙げた後急かされるように「次は初夜だ」とホテルに直行するところ。つーかその前に既に致してるので初夜じゃないし。10代みたいにがっつくなよwww

これも漫画オリジナルなんですが、作品のキーアイテムとして「クリームたっぷりのカフェラテ」が出てきます。これが原作ではそこまでプッシュされてない。最後コーヒー店に勤めるところは一緒だからそこからさちみ先生が着想を得て膨らませたのかも。このカフェラテは母親が唯一ノエルにくれたご褒美。と言っても作ってくれた訳ではなく、コンサートが終わってからノエルをホテルに残したままイーサンの父親と遊びに出かける時に「ルームサービスで好きな物を頼んでいいわよ」と言い残してノエルがオーダーしたもの。せつねー。ノエルはインタビューでもこのカフェラテを好物として挙げており、それをイーサンが覚えていたというのが伏線になってるんです。それだけじゃない、ピアノの音色を聴いてノエルが練習を続けていると分かったり、回想シーンで、イーサンの母親がノエルの母親への恨みつらみを言ってた時もイーサンは不安げな表情を浮かべる幼いノエルを見つめていたという描写から、昔からノエルのことが気になっていた、おそらく自分と同じ親に振り向いて貰えない者としてシンパシーを抱いていたことが示唆されるのです。実際会ってからも彼女を傷つけることは言わないし、自信を失っていた彼女の心を奮い立たせ導く。でもイーサン本人はそれに気付いていない(記者に「あれが初恋だったのかな」と出まかせを言ったけど真実だったという皮肉)。母親が少しでも浮かばれればと思ってノエルの邸宅を買おうとしたり、自分の利益のためにノエルを利用していると思ってる。これ原作をそのまま漫画化したら傲慢ヒーローに分類されるのかもしれないけど、さちみ流アレンジで親の愛を得られなかった男女が互いの欠落した心を修復し合う魂の再生の物語に生まれ変わってるところがね、すごいよね。原作の漫画化というより昇華と言っていいレベルなんじゃないかな?

イーサンから勇気をもらったノエルが久しぶりに公の場でピアノを奏で聴衆を魅了する中2人の心が通じ合う、その後互いの想いを確かめ合うかーらーのイーサンの父親登場で急転直下の流れが神がかって最高です。ピアノの場面がいいのよ、まるで音が聴こえてくるようで。漫画でピアノの音色を表現するのはすごく難しいけどその試みが成功すれば作家冥利に尽きるんじゃないかしら。とにかくいい(語彙力ナシw)。おまけにこの場面のノエルが神々しいくらい美しいのもポイント高い。そして2人がようやく結ばれそうな絶妙なタイミングで父親登場。水と油のような親子なのに顔がそっくりなところが業が深いですよね。因みにじとーっとした陰気な目は母親と同じ。ノエルも見た目は母親に似てるし因果な2人です。やってることは最低なのに息子に対する指摘がいちいち的確なのムカつくw この辺原作では父親は出てくるだけ、祖父母もモブみたいなものです。「幸せを教えてこなかった」という印象的なセリフもないしおばあさんも認知症になってない。コミック版では、おじいさんは出来の悪い息子の代わりに孫に英才教育を施したけど今になって負担を強いてしまったことを後悔してるんだよね。この辺の話の膨らませ方グッと来ます、機能不全の家族ドラマになっていて。いや、原作もいいところあるんですよ。ノエルがずっとインスタント食品ばかり食べてて生活能力なかったり、イーサンの母親がオーバードーズするので薬を隠していたり、ノエルには母親しかいなかったのにイーサンが祖父母に育てられたと知って羨ましいと思う描写があったり。でもコミカライズの方が一億倍くらいいいです(数が増えてるw)。方や母のトロフィーとして、母に女としての人生を謳歌させるためにピアノの腕を磨いて大衆に消費され尽くして捨てられた娘。方や父は愛人にうつつを抜かし、夫に見向きされない母は精神のバランスを崩し、早くから大人にならなくてはいけなかった息子。現実にも似たような境遇の人はいるだろうけど、せめて物語では幸せになって欲しいって思うじゃないですか!

最後は当然ハッピーエンドなんですが、自分を不幸にした親への断罪イベントはないんだよね。でもそれでいいと思う。本人たちが幸せになればあとはどうでもいい。断罪イベントにページを割くなら幸せな2人を見ていた方がいいし。

そんな訳で今回はそんなに長くしないつもりだったけどいつもと同じ分量になってしまいました(悪い癖)。さちみ先生のハーレクイン作品は短編ながら作り込みが深くて何度でも読み返したくなるのでホントおすすめです。恋愛ものは苦手〜という方でも重厚な人間ドラマが好きなら楽しめると思うので読んでみて!

https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c02984

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA