宝塚のことを1ミリも知らない私が先日元星組トップスター北翔海莉さんのコンサートに行くという無謀なことをして感想をTwitterに書いたら私にしては結構RTやふぁぼを貰ってびっくりした。宝塚の人気はすごいんだなあと改めて思った次第だが、せっかくなので私が唯一知っている宝塚作品についてこの機会に語ろうと思う。
今宝塚のことを1ミリも知らないと書いたけど、確かに生で舞台を見たことすらないのだがなぜかDVDは一枚だけ持っているのですよ、それが「エリザベート」。
いきなりここで話が逸れますが私実は宝塚に対して食わず嫌いが長期間ありまして。と言うのも、かなり昔東京宝塚劇場の前を通りかかった時偶然出待ちに遭遇したことがあったんですね。かなり大人数で整然と並んでて。ちょうどその時スターさん(もちろん誰かは知らないけれど)が出て来たところでファン達が一斉に「お疲れ様でしたー」みたいな掛け声をかけたんです。何の予備知識もなかったんで驚きましたw宝塚と言うのは特殊な世界なんだなーと。それ以来何となく疎遠になってしまって。
しかし、最近youtubeでミュージカルの動画を漁っていた時に偶然関連動画で宝塚の「エリザベート」が引っかかった。それで何となく見てみたら「何これ?!」ってなって。この場合の「何これ?!」は否定的な意味ではないですよ、今まで自分が出会って来なかったものをどう判断したらいいか分からなくてモヤモヤするけどこのモヤモヤを払拭するためにもっともっと見たい知りたいってなった時の反応。
そして一週間後には手元にDVDが届いてた。調べたらこの作品は何度も再演が繰り返されているらしくどれを買えばよいのか混乱したけれど、色々吟味して自分の好みに一番合っていたのが初演版だったので(最初に見た動画も初演版)それを選んだ。
もちろん「エリザベート」という演目は知っていたしおおまかな内容も聞いている。昔「日本版はウィーン版と比べて歴史に対する言及をかなり端折り、ただのラブストーリーに改変しているのがよくない」という批評を読んだことがあり、何も知らない私は「ほーそんなもんかー」位に思っていた。しかし、今回宝塚版と先日発売された東宝版(ついでと言っては何だが比べてみたかったので買った)、できる限りウィーン版も調べて比較した結果「宝塚の潤色も悪くないじゃん」と言う結論に達した。世界史にめっぽう疎い私はこの機会にあの時代のハプスブルク家の歴史も調べたのだけど、どれだけ日本に住んでいる私達が知識として持っていても、オーストリア人の歴史の物語は共有しえないだろうと言うことに気付いたのだ。つまり600年も続いた今は存在しないハプスブルク家への郷愁とかその他諸々の複雑な思いは違う歴史を生きてきた私達には理解しきれないだろうということ。オーストリア人にとっての「エリザベート」は帝国末期の王妃の生涯を通してハプスブルク家の衰退を描いたものだろうけど、彼らの歴史の物語を持たない私達にはあの潤色の仕方でむしろよかったと思う。特にそれを強く感じたのは1幕最後のエリザベートが見返り美人みたいな構図で(説明が下手でごめんなさい)現れるところ。あれは彼女の有名な肖像画と同じポーズなんだけど、ウィーン版やドイツ版では観客席から「いょっ待ってました!」みたいな反応が返ってくるのに対して、同じ演出の東宝版は無反応である。そりゃそうだよね。私だってその場にいたら「あの絵と同じだな」とは気付くけど拍手喝采まではする気にならない。それがハプスブルクの歴史の物語を持つ者と持たざる者の違いだと思う。
長くなったのでその2に続く…