宝塚「エリザベート」はいいぞ その2

偉そうにつらつら述べてしまったが、宝塚版に話を戻そう。私が初演版を選んだ理由は主要キャラの演者がどれも上手くてバランスが取れているからだった。舞台は皆で作るものだからどれか一つが欠けていると気になってしまうのよね。

まず一路真輝さん演じるトートがすんごいの!誰も抗うことができない硬質でひんやりした「死」という感じで!舞台に立ってるだけで存在感が半端ない!ダンスの人ではないのは私にも分かったけど立ち姿や大股で歩く姿がいちいち美しい!そして圧倒的な歌唱力ですよ!コーラスと被っていても一人だけ浮き上がって聴こえてくる。「最後のダンス」なんか何度見ても息を止めて見入ってしまうくらい。しかもただ歌がうまいだけではなくて、歌にセリフを乗せている感じが絶妙なのである、なぜこう感じるかはうまく説明できないんだけど。ずっと超然とした表情で感情を表に出さないけど、その分ラストでエリザベートが抱きついた時にわなわな震えるのがぐっと生きてくるのよね。何気ない表情や流し目一つでも萌えてしまってこれは恋に違いない(確信)。それまで私は女性が男性を演じるのは限界があるだろうと思っていたので、ここまで自分が一路トートにハートを鷲掴みにされるとは夢にも思わなかった。何と期待して見た東宝版よりも惹かれてしまったのだから!これは食わず嫌いだったのが勿体なかったな〜ジャンピング土下座ものだな〜。そんな超然としたトート閣下ですが私の一番のお気に入りはルドルフ少年の「猫を殺した」という告白でぎょっとして振り返る場面wなんか可愛いと思ってしまったw

タイトルロールのエリザベートは花總まりさん。宝塚版では若干23才だったと言う。本人もインタビューで述べていたけど確かに必死感が見ているこちらにも伝わってきてその熱意が化学反応を起こしてとても印象的なエリザベートになっている。歌唱の技術的にはまだ途上な所もあるんだけど、要所要所での表情が尽く決まっている。1幕最後の鏡の間から出てくるところ。孤高で覚悟を決めた表情がものすごく美しい。あと息子を亡くしてトートに死なせてと懇願するところや、ラスト白い衣装になった時の狐につままれたようなある意味素っ頓狂wな表情もうまい。そんな若いうちから演技力があったのに東宝版では瑞々しさを失わぬまま更に技術が成熟しているのは純粋にすごいと思った。

フランツもいいんですよ(そろそろ語彙力が尽きてきた)。とにかく気品があって暖かく包み込む感じで。エリザベートの父にマザコン皇帝なんて言われるけどこのフランツはそうは見えなかった。どちらかと言うと義務感が強くて価値観が古い人というイメージ。だからエリザベートと衝突した時も「フランツひでー」とはならなかったしむしろ価値観が絶望的に合わない夫婦なんだなという印象を持った。フランツはひたすら耐える人だからややもすると存在感がなくなってしまうんだけど、そうなるとラスト近くの最終答弁のシーンが生きてこなくなるんだよね。トートと対等に張り合えるだけの説得力を持つ存在でなくてはならないけど、そこんとこ本当にかっこよく見える(そこに至る早着替え大変だったろうな)。歌もね、特に低音の響きが美しかった。フランツ演じる高嶺ふぶきさん次期トップというだけあってフィナーレで歌う所がキラキラ光ってたな。

ルキーニも歴代の中で初演が一番いいなと思ってしまう。変な味付けもなくて基本に忠実というか(基本って何だよ)。ミュージカルの狂言回しってすごく重要な役だと思うけどその役割をきちっと果たしている。ユーモアから狂気の演技までまんべんなくうまいし、何より女性が男性を演じている不自然さが一切ないのがすごいと思うwここまで来ると職人技だな。

あとルドルフね。登場場面は少ないけど私はこのルドルフをもっと見ていたいと思った。それ位印象に残る。歌もとてもうまくて「闇が広がる」は白眉!演技もとても上手で、捨てられた子犬のような憐れな姿が心に刺さった。ルドルフを演じた香寿たつきさんって何でもできる器用な人だなというのは分かったけど、遅咲きでトップになったらしいね。北翔さんの時も思ったけど宝塚は三拍子揃った芸達者な人を盛り立ててればもっと人気が出るんじゃ?とこれは完全な素人の素人考えです。

あとフィナーレね。繰り返すけど私は宝塚を1ミリも知らないので最初に見た時は何だこれは?状態だった。初めて見た時はかっこいい劇中歌を転調させてアレンジを変えるとこんなにダサくなるんだ!?という驚きもあったけどなぜか癖になって気づけば何度も繰り返し見てるという状況にw何より劇中では悩み苦しんでいた登場人物が晴れやかに歌いながら大階段を降りるのがカタルシスになるよね。黄泉の世界で恩讐を乗り越え心の平安を取り戻したみたいな感じwあのゾフィーですら「エリザベート君の名は永遠に輝き失わぬ」とか歌ってるんだから(いや、ゾフィーの人がエトワールに抜擢されただけというのは分かります)w

長々と2回に渡って書いてしまったがそれだけ私にとっては語りたくなる作品だったということで。有名すぎて散々語り尽くされてるのは承知だけど。悔しいのはこの作品に触れたのは20周年コンサートの後だということ!自分の間抜けさに呆れ返りますわ。悔しいからガラコンサートのDVDも買ってしまったけどさ(こうして沼にハマっていくんだね…)。

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