今回はロンドンの喧騒を離れてスコットランドの古城が舞台。よってモリアーティ絡みではないしハドソン夫人もレストレード警部も出てこない。内容もタイトル通り原作にそこそこ忠実、しかしそこは新ロシア版ならではの味付けがしてある。今回はホラー仕立てになっており、ピアノの不協和音が恐怖を煽る演出として使われていて、夜中電気を暗くして見ていた私は事あるごとにギャーギャー叫んでましたw
ホームズは大学時代の友人レジナルド・マスグレーヴから家に代々伝わる儀式に一緒に参加してくれと依頼された。レジナルドの祖先はチャールズ1世に仕えた騎士で、家は何百年も続く歴史ある家系であり、スタフォード家と血みどろの抗争を繰り広げて来た。昔父親が儀式の最中に黒衣の男に首をはねられたため一人で参加することに怯えていたが、唯一の跡取りである彼が財産を相続するには儀式に参加しなければならないという条件があったのだ。
原作にも同じ名前のレジナルドという人物が出てきて同じような役どころなのだが、原作が無難な人物だったのに対しこちらはどこかぶっとんでる。あのホームズがワトソンに「医者ならあいつが正常かどうか調べてくれ」って言うくらい。あけっぴろげで飄々としててちょっと不思議で捉えどころのない人物、このシリーズの特徴なのか?3話に出てきた駐英フランス大使や花嫁(あと6話のあの人物も)にもどこか通じるキャラクターであるような気がする。おまけにアメリカかぶれと来ている。彼が「OK」という言葉を使ってワトソンが「?」な反応してた場面、私も見てて?だったのでwikiでOKの語源を調べたら19世紀中頃にアメリカで生まれた言葉で第一次・二次世界大戦で広まったとあるので、ビクトリア朝のロンドンではまだ馴染み薄かったという事なのね。
レジナルドはアメリカで進歩的な思想にも触れて、住まいとしている中世の古城を改装して天文台を作ろう!などと言っている。現代に置き換えるとテーマパークにしようみたいな?当然保守的な故郷の人からは反感を買う。彼の唯一の家族である異母兄(正妻の子でないため財産を継げない)はホームズ達が一緒に来たことも面白くないらしい。城だけでなく、スタフォード家と戦った地下道や、石で挟まれた先祖代々伝わる大きな剣、スタフォードの先祖の首をはねる場面を描いた絵画など確かに古めかしい仕掛けがいっぱい。しきたりも珍妙で城ではズボンではなくキルトを着用(ホームズとワトソンも寝てる間にズボンを没収されてしまったw)、昔フォークで怪我をした人がいたので食事をする時は二本のナイフを使うなど(何だよそれ)。ここまでだとレジナルドが反動で進歩的になる気持ちも分かるかも…
この後原作とドラマのネタバレになってしまうので改行
個人的な話になってしまうんだけど、私は結構昔にこの原作小説を読んでそれで執事のイメージが付いてしまったんですね。だから日本のオタクカルチャーでの執事の扱いを見ると日本では随分違って解釈・加工されたなと思う。戦国時代の忠実な主従関係のように捉えられているイメージ。あと「執事喫茶」と言う言葉からも分かる通りお嬢様に仕え時には癒してくれる存在みたいな。もちろんイギリスにも忠実な執事キャラがいるのは知ってるんですけどね、ピーター・ウィムジィ卿の執事バンターとか。でもこの作品に限らず悪い執事も沢山いるよね、刑事コロンボにも出て来た気がする。新ロシア版でも執事が黒幕なのは同じ。でもレジナルドは寛容にも執事ブライトン改めスタフォードを許してしまうのよね。親父を殺した犯人をだよ?!いくら何でも寛容すぎないか?長年に渡る両家の因縁を終わらそうってことなんだろうけど。そのレジナルド、アメリカかぶれで風変わりな頼りない人物だけど(ホームズに黒衣の男と直接対決するように言われて「嫌だ!俺はズボンを履いてフォークとナイフで食べるんだ!」には笑ってしまった)、最後は家に代々伝わる剣でブライトンと対決する。その剣は大きな石に挟まれてスタフォードは抜くことができなかったけれどレジナルドは容易く抜いてしまう。これってアーサー王伝説のパロディだよね?第5話もそんな感じで相変わらずすっ飛ばしています。ホームズとワトソンのキルト姿が見られるのは新ロシア版だけ!ワトソンは風邪は引くわ、悪夢にうなされるわ、ホームズに邪険にされるわで踏んだり蹴ったりだけどw