1934年版「紅はこべ」(追記あり)

久々に紅はこべの話題です。今回はレスリー・ハワード主演1934年(昭和9年?!)制作の映画版について。小説を売るためにわざわざ戯曲に直して最初は劇場用作品として世に出た紅はこべ、映像化はこれが初。確かこの頃はオルツィさん存命だったからこの作品見たはずだよな。

レスリー・ハワードって誰ぞや?と思ったが「風と共に去りぬ」のアシュレー役と知ってあああの人かと納得。アシュレーって見ててイライラする程の優柔不断な男だった記憶があるけど、普段は典型的なイギリス紳士の役が多い人だったらしい。確かにパーシーもその系譜だね。

最初はちょっと古すぎるよなーと敬遠してたんですが、海外の反応を見るとちょこちょこ名前が上がるので見てみたらいやーこれが美男でねー。こりゃスカーレットが熱を上げるのも分かるわーって思いましたわ(作品が違うっての)。

いや、正確には顔そのものよりも演技がうまいところが惹かれるんですね。マルグリートには可哀想だけどパーシーが道化の仮面を被って最愛の妻を突き放したりストレートに冷酷な態度をとるシーン好きなんですよ。レスリー・ハワードは元々端正な顔立ちをしているせいか、マルグリートをいたぶるところが特にハマっててゾクッと来てしまう。私の中ではアンソニー・アンドリュースがベストパーシーなのは変わらないけど彼のパーシーがマルグリートに冷たく接しても愛したいという気持ちが垣間見えるのに対して、レスリー・ハワードのパーシーは人一倍仮面が強固で誇りを傷つけられた冷たい怒りがよりストレートに伝わって来る。

この映画の一番の(個人的)見所はショーヴランに追い詰められたマルグリートがパーシーに全てを打ち明けるシーン。マルグリートの誤解が解けた後(因みに映画版ではマルグリートが17歳の時サンシール侯爵の息子に求婚されそれを知った侯爵が彼女を投獄したという因縁になっている)「紅はこべに危険を知らせなきゃ」と言うマルグリートに「彼を愛しているのか」と尋ねるパーシー。マルグリートは「英雄として尊敬してるだけ」と否定するがパーシーがソフトに壁ドン(!)して「正体不明の者に熱を上げるのは禁物だ、彼は妻帯者で妻を熱烈に愛しているかも?」マ「それはない」パ「なぜそう思う?」マ「妻を愛する男性が彼女に辛い思いをさせとくはずがないでしょ。貴方はどうなの?」こ・こ・で!パーシーが僅かに顔を傾けて思わずキスをしそうになるんですよ!でもぐっと抑えてさりげなく身をかわす。もーこれだけでお釣りが来ます!正直映画の出来としてはちょっと惜しい部分がなきにしもあらずなんですが(誤解が解けてからのマルグリートとのラブラブぶりが見たかったなーとか、この時代の映画にありがちだけど肝心な所でヒロインが失神するのはないよとか、当時の男性の髪型は長髪のはずなのに短髪になってるとか言いたい事は山ほどあるけど)所々光るシーンがあるし、何よりレスリー・ハワードの名演を堪能するだけでも見る価値あると思う。

あと実は1982年のドラマ版はこれを下敷きにしてるんですね。結構同じシーンが多くて驚いた。ピンパーネル団の一人が聖職者に変装して貴族を助けに行くところ、トゥルネイ伯爵がイギリスへの橋渡し役としてロベスピエールに利用されるところ、パーシーの「死ぬまで彼女を愛するよ、まるで悲劇だ」というセリフ、その他にも色々。映画版のいいところを移植して換骨奪胎したのが1982年版だったのかなーと思う。

映画の著作権は70年と聞いたので今回は問題ないだろうと言うことで動画上げてみます。えいやっと。英語字幕付きなので筋が追いやすいです。さっき挙げたシーンは1:08:53辺りから。

続きがあるんだけど長くなったのでまた次回。

(7月13日追記)

最初にこの文章書くときには迷って省略したのだけどやっぱり書きたいので付け足しますwかっこ悪いけど仕方ないw

上に挙げた壁ドンかーらーのーキス未遂のシーンの少し前、兄の命と引き換えに何を代償に払ったのかとパーシーがマルグリートにきつく問い詰めるシーンがあるんです。道化の仮面をかなぐり捨て緊張の余り張り詰めた表情で同じセリフを繰り返すパーシー。この時彼の胸に去来したのはサン・シール侯爵の時以上の(これについてはマルグリートに非がないことは分かったとは言え)最悪な事が起きたのではという疑念だと思う。そして彼女の回答は「紅はこべを裏切ってしまった。フォークス宛ての手紙を盗み見してショーヴランに教えた」というもの。これを聞いたパーシーは拍子抜けして一気に緊張がほぐれて笑い出しそうにさえなっている。左手でベストをもぞもぞと触っている様子からもそれが窺える。この表情の変化もいいんだけど、手遊びみたいな動きで緊張から解き放たれたというのを表現しているのがいやーすごいなー本当にうまいなーと思った(語彙力がないのはいつものことなので勘弁してくださいw)。彼にとっては何の気兼ねもなくマルグリートを愛することができると分かって嬉しくなりでもプライドが勝って冷静を装っている。そして後に続く「彼は妻帯者で妻を熱烈に愛してるかも」というセリフは自分の事を指してる訳でしょ。それからは上に書いた通り。ああもう!ひたすら萌えずにはいられないよ!

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