ある日国立銀行にE・バックリーという男が5万ポンドという大金を持って来て全て金塊に交換するようにと依頼した。最初は胡散臭い目で見ていた支配人も大金を目の当たりにしたら揉み手で対応。しかし目的を果たしホクホク顔で銀行から出たバックリーを待ち構えていたのは偽札作りの容疑で張っていた警察だった。彼は馬車に連れ込まれ襲撃され血まみれの状態で倒れる。こと切れる前に「ハリファックス」と言い遺して。
これまで説明を端折ってきましたが、ワトソンはコツコツとホームズの事件を小説にしたためて編集者に見せに行ってました。最初はけんもほろろな対応だったのが話が進むごとに少しずつ褒められる箇所が増えてきて、いよいよ第6話にして処女作が発売!するとすごい反響でベーカー街221Bに多数の人が押し寄せた!一方で大迷惑なのが小説に書かれた実在の人達。探偵として目立ちたくなかったホームズは激おこ。怒りの余りボクシンググローブをワトソンに渡し決闘を挑む。「おっ、ボクシングじゃホームズに勝ち目はないはずだが?」という視聴者の心配をよそに、グローブの中にゴキブリを仕込み見事引っかかったワトソンを見てm9(^Д^)プギャー。老婦人に改変されて怒っていたハドソン夫人はそれを見てウギャー。無能呼ばわりされたレストレード警部も当然面白く思っていなかった。今回はこのレストレード警部にスポットライトが当たります。
そんな中、ワトソンの小説で評判を聞きつけて赤毛の男性がホームズの元を訪ねた。ここで「おっ」と思われる方もいるかも、そうあの「赤毛連盟」です。昔原作を読んだ時はなぜ赤毛というだけでバカにされる対象になるのか不思議だったけど(だって皆黒髪の日本人から見れば素敵に見えるし)、そういえば赤毛のアンでもアンが黒髪に憧れて髪を染めたら緑になったというエピソードがあったな。導入部から最後のオチまでほぼ原作通りだが新ロシア版ゆえここでは終わらず、むしろこれからが本題。
赤毛連盟のオチは犯人達が赤毛の男性の家から銀行へ連なる地下道を掘っていたということだったが、新ロシア版ではそこから警官が買収されて銀行強盗の一味に加わっていたという話が続く。張り込みしていた銀行から逃走した3人の警官の犯人を追うホームズとワトソンとレストレード警部。犯人達は予め毒を仕込まれていて、だんだん逃げ足が鈍くなり2人は射殺、生け捕りにできそうだった最後の1人も撃たれる前にベラドンナの毒が回って亡くなる(そしてその場で魚を捌くように涼しい顔で死体を解剖するワトソンと血が見れないホームズ)。
この事件はモリアーティが黒幕であると看破したホームズだが、何とここで逮捕されてしまう。警察内部の犯行と外に知られる訳にはいかないからだ。秘密保持のためホームズを消すようにとの命令が国から下るが、職務に忠実なはずのレストレード警部は自らの判断で翻意し、一緒に捜査するという条件でホームズを密かに釈放して共に行動することにした。そこでホームズを助けるために銃を持って待ち伏せして警部を脅しにかかるワトソンwwその前はハドソン夫人にホームズを見捨てたと責められてオロオロしていた癖にやることがいちいち大胆と言うか物騒と言うかw
この後3人で秘密裏に捜査を進めることになるのだが、銀行強盗未遂事件とバックリーの件とモリアーティの関連が次第に明らかになってくる。どうつながっているかは実際に見てのお楽しみとするが、第6話では裏テーマとして「警官の矜持について」というようなものが描かれている。3人で地下道を調べていた時レストレード警部がワトソンに小説の原稿料について尋ねるシーンがある。ワトソンが答えると、「そんなに貰っているのか。我々はどんな危険に晒されても僅かしか貰えない。なぜ地道に警官として働く若者の話を書こうとしないんだ?」と警部が返す。警察の中に裏切り者がいたにも関わらず彼は部下達を信じている。市民にバカにされワトソンの小説でもコケにされwそれでも危険に立ち向かう無名の警官を誇りに思っているのだ。
思えばモリアーティがつけ込んだのもそこかも。我が身を犠牲にしても見返りの少ない警官を、法外の報酬をエサにして味方に付ける。モリアーティの手口って内部から腐らせて組織(ここではイギリスという国か)を壊滅させるという巧妙なやり方だと思うけど、不満を多く抱えていそうな警官は格好のターゲットだったのかもしれない。
それを踏まえると、報われなさを重々承知しながら矜持を失わず強い信念を持ったレストレード警部という人の凄さが分かる。終盤、銃声が響く中裏切った部下に狙われながらも必死で警察の宣誓書を暗唱する姿は痛々しくさえある。何をそこまで守っているんだろう?守りきった先には一体何があるんだろうか?などと考えてしまった。6話の主役はレストレード警部と言っても過言でないと思う。
この先核心的なネタバレになるので改行しますよ(つーか既に色々ぶっちゃけてしまってる感もあるが)。
これは本編と言うより字幕に不満があるんですが、謎解きに重要な台詞が字幕に出ていないお陰で終盤???な事態に陥ってしまうんです。それは「膝に土の付いている奴が犯人だ」というホームズの台詞。それを参考に警部は寝返った警官を識別して次々撃ち殺すんですね。この台詞がないと無差別に殺してるように見えて「警部、とうとうおかしくなってしまったの?!」となってしまうんです。私はこの作品を解説しているブログに行き当たってたまたま知ることができたんですが、普通分からないと思うよ…
色々と考えさせる第6話。でもいつも通りクスッと笑えるシーンもまた多いです。個人的な見所としては、ホームズ達は地下道を捜索している時に第2の通路を見つけるんだけどどうやって見つけたか?というところ。ここは本当に笑えます。あと、新ロシア版の世界ではワトソンの創作となっている「鹿撃ち帽とインバネスコート」のホームズ像の誕生の秘密。バックリーの人物像も色々想像すると愉快です。次回は「最後の事件」。そのタイトルはもしや?!乞うご期待!