新ロシア版ホームズ #7最後の事件

第7話にしていよいよ来ました「最後の事件」。今回のオチはほぼ原作通り。ホームズとモリアーティがライヘンバッハの滝で対決してワトソンが駆けつけるが時すでに遅しみたいな。ただしこのバージョンでは3話で南米に逃れたはずのアイリーンが再登場してストーリーに大きく関わって来るのが他と異なる。よって結論は同じだけどそこに至る過程が新ロシア版ならではという訳で、どこが核心的なネタバレになるのかがいまいちはっきりしないのだ。そこで今回は私が気に入ったシーンを中心にいい所までダラダラ語ってしまうが、まだ未見で新鮮な気持ちで楽しみたい方がいらしたら回れ右してください。

場所はとある伯爵夫妻のクリスマスパーティー。宴の最中に伯爵の友人が殺され、屋敷の金庫も荒らされていたが何も盗られてはいなかった。伯爵の依頼を受けて捜査していたホームズ達だったが、後から来たレストレード警部に追い返される。なぜかあっさりした反応のホームズ。そして帰りの電車内でも浮かない顔をしている。彼はアイリーンとの思い出の品であるワインのコルク栓を犯行現場で拾ったのだった。それで彼女がこの事件に関与していることを察したのだが…

この第7話では、ホームズとアイリーンが初めて出会ったエピソードが紹介される。本当に愛していたのか出し抜くのが目的だったのかどこまでも分からないアイリーンの態度。まさしく峰不二子という例えがぴったり。惚れた側は「ぞっこん」(死語)なのも同じ。おまけに「まだあの女に惚れてるのかよ」と言う相棒も存在する。ここでは次元じゃなくてワトソンだけど。

ホームズが逃してやったはずが、再びモリアーティに操られている様子のアイリーン。どこまでも助けてやりたいホームズに対して「あの悪党の女にどこまで手を貸すのか」とたしなめるワトソン。普段は身近な人の死に心を痛めるワトソンに「感傷に浸るのは無意味だ」と無慈悲に言い放つホームズだがここでは形勢が逆転している。そこまでアイリーンの事を気遣うなら普段からワトソンにも共感性を示せばいいのにw

アイリーン救出のためにホームズが取る行動は犯罪スレスレというかむしろギリギリアウト。既にワトソンは引き気味(まだこの時点では友を心配する気持ちと冒険への好奇心が優っている状態だけど)。ドイツ皇帝が主催するドイツ大使館のパーティーにアイリーンが歌手として現れる予定と知るやとんでもない方法で招待状をゲットし乗り込もうとする。招待客に化けるには妻役も必要なので、ワトソンはハドソン夫人に自分の夫人役として参加するよう頼むのだがそのシーンは必見!「一夜限りの妻なんてバカにしてるの?!」と夫人にキレられしどろもどろのワトソンが「私は大したことない人間で…」と告白し始める。そしていつの間にか本物のプロポーズをしているのだ!最初はクスクス笑えるシーンだったけど、最後には彼の不器用ながらも誠実な人柄にほろっと来てしまった。こんなん不覚にも萌えてしまうではないか…ハドソン夫人もOKせざるを得ないよね…

ホームズの方も女性を調達して4人で大使館に向かった。ローゼンベルグ兄弟ということになっている二人は秘密裏で別室に呼ばれる。そこではある発明品についてのプレゼンが行われようとしていた。印象的なのがその時のドイツ皇帝による「ロシア人の発明を我々は実用化させて賢く利用する。ロシアは材料を提供し完成品を買わされるのが宿命だ」と言うセリフ。前にもイギリスとフランスの自虐ネタという形でロシアが茶化した事があったが、今回はロシア人がドイツ人に言わせているという構図。どの民族も外国に対して色々思うところはあるけれど、ロシア人はこんな思いを抱えていたのかと興味深いシーンだった。

男達がそんな中女達も難儀していた。元々ローゼンベルグ夫妻を知っていた人から当然怪しまれる。「ロイヤルアスコットでお会いした?」とカマをかけられたホームズの妻役の女性が「そんな店行くわけないでしょ」と墓穴掘りまくり。慌ててハドソン夫人がごまかすがすっかり怪しまれている。緊迫したシーンの裏側ではこういったやりとりがあってやはり笑ってしまう。今回の話は終始暗く重苦しい雰囲気なのだけど、所々こういった小ネタが「抜き」の効果を果たしていて、見てて辛くならないのが流石。

元々アイリーン救出ありきで穴だらけの計画なのですぐにボロが出る。アイリーンが大使館の金庫を荒らす現場を抑えたホームズは二人で外に飛び出しアイリーンを逃がす。一方ワトソンは正体がバレてしまい女性2人を伴って逃げるが逮捕される。レストレード警部からホームズが盗みを働いたと知らされたワトソンは裏切られたと怒りレストレード警部に協力してホームズ逮捕に手を貸す。それを見ていたハドソン夫人「やっぱり貴方とは結婚しません」とぴしゃり。ハドソン夫人マジ天使!こんなできた人絶対放しちゃいけないよワトソン!それで目が覚めたワトソンは出版権を売ってお金を作ってホームズ釈放に動く。そこでレストレード警部になぜそこまでしてあいつを助けるの?と聞かれた時の回答。ここはシリーズ中でも屈指の名シーンと思うので、ワトソンのセリフをそのまま抜き出します。このセリフに二人の「一筋縄ではいかないけど相手を強く思いやる」関係性が凝縮されていてとてもぐっと来るシーンです。

「私は腹の底からホームズを憎んでいます。理由は彼のだらしなさ、詮索好き、自信過剰、その他色々。でも彼が自由だと私は安心して眠れるんです。彼が自由だと正義を信じられるんです」

しかしホームズは意外な人物に釈放して貰う。その人物とは?その目的は?それがどうモリアーティに関わってくるのか?続きは実際に見てください。アイリーン以外には誰にも無頓着な態度のホームズがいざという時に見せるワトソンへの思いやりは感動的だし、アイリーンに対する態度からも一度信じた人は最後まで信じ抜く彼の誠意が垣間見える。クライマックスの対決も凍てついた滝(ここでは冬の設定になっている)で行われ原作とは違うが雪山で繰り広げられる死闘は迫力ある。もちろん「バリツ」は出てきませんよw(出たら一気にギャグになってしまう!)好きなシーンが多すぎてあれもこれも語ってしまったが、これを読んでまだドラマを見てない方がいたらぜひとも見て欲しい!時間が経つの忘れるほど面白いよ!次回はいよいよ最終回、どうなることやら!

 

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