偉大なるトンチキ作品「Love Never Dies」(ネタバレあり)

ではこれからストーリーの内容に入っていくのでネタバレの嵐になりますよ。ネタバレしてもいいや!と言う方だけ読んでください。

あの事件から10年後、1905年アメリカ。前作で生死不明のまま姿を消したファントムさんはジリー母娘の計らいによってアメリカに逃げ延びていた!まずここでおい!なんですが初っ端から突っ込んでたら身が持たないので我慢しましょう。ファントムさんは生来の才能を発揮してコニーアイランドにある遊園地ファンタズマの影の支配者になって大金持ちになっていたのだ。ジリー母娘は遊園地のショーで働いていて娘のメグはダンサーとして活躍していたがファントムに認めてもらえず不満を募らせていた。一方のファントムさんは成功しても愛するクリスティーヌへの想いは満たされず苦悩していた。

前作から引き続きマダム・ジリーとメグが出てますが、二人とも性格が変わっている!富や名声を露骨に追い求め嫉妬や欲にまみれた弱い人間というか。10年の間に苦労したとか言いたいんだろうけど流石にキャラ崩壊だよ…クリスティーヌがアメリカに来てオペラハウスで歌を披露すると知ってファントムさんの興味が移らないかと気が気でない。ファントムさんも前作ではオペラのスコアを書いていたのに遊園地の影の支配者ってそれでいいのか?

そこへやって来たクリスティーヌ一家。そこで衝撃の事実が発覚。何と!ラウルは破産してクリスティーヌの稼ぎを当てにする飲んだくれに落ちぶれていた!いや、ファントムさんを上げたいのは分かるが相対的にラウルを下げるのは話作りにおいて下策だぞ。ラウルは10歳の息子グスタフも邪険に扱う。そんなラウルが飲みに行った隙を狙ってバルコニーからファントムさんがホテルの部屋に乱入!どうやってバルコニーに入ったのか考えるのは野暮というもの。絵面的に美しいからよしとしましょう。

そこで二人の哀切ながらも情熱的なデュエットが聴けるんだけど、ん?「I kissed you, I touched you」とか歌ってる?何と!二人は過去に「なかよし」(婉曲表現)をしたというのがこの歌で判明するのです!えええええ!正直ドン引き。前作のラスト、クリスティーヌがハグしてキスした時、今まで誰にもそんな事をしてもらえなかった彼は両腕をどうしたらいいか分からず宙に浮かせたままわなわな震えていただけだったのに、よく一足跳びにそんな事できたな!もうこの辺が矛盾ありすぎて同人ぽいんだよなー。

ファントムさんはクリスティーヌに自分の書いた曲のスコアを渡してファンタズマで歌うように迫りその場を去った。後日ファンタズマの稽古場でジリー母娘とラウル、クリスティーヌが再会する。表向きは再会を喜びながらも皆内心は複雑な想いを抱えていた。そんな中グスタフはファントムさんの居場所に迷い込み、そこでピアノを弾いてみせる。彼に音楽の才能を感じたファントムさんはキッチュで怪しい自身のコレクションを見せ、美しい!と喜ぶグスタフに自分との共通点を見出しもしや俺の子では?と思うんだけど…普通自分と血の繋がりを発見する時って身体的特徴が同じな場合だよね?いくら親子とはいえずっと離れて暮らしてきたのに特技や美意識が似るってそんな訳あるかい!それにファントムさんアングラカルチャーそこまで好きだったっけ?確かに見世物小屋出身だしクリスティーヌの等身大フィギュアとか作っていたけどミュージカル版の彼は地下にいながら天上の夢を見るキャラだったような?原作の怪奇趣味に引きずられてるのかな?ここで歌われるのはゴリゴリのロックナンバー。かっこいい曲で歌もうまいし盛り上がるんだけどここだけロックなので他と比べると浮いて見える…ファントムさん調子に乗って仮面を外してしまうが、グスタフは彼の顔を見て驚いて逃げ出した。その後息子を探しに来たクリスティーヌからグスタフはファントムさんの子である事が告げられ俺の財産くれてやる!と喜ぶファントムさん。それを聞いたマダム・ジリーは自分たちは何も得られないのかと恐れるのであった。

ここまでが1幕。ふーなんか疲れた。2幕では冒頭からラウルが店で飲んだくれている。そこにメグがやって来てクリスティーヌにファントムの歌を歌わせてはダメなどと言われ、俺はあんな奴に負ける訳がねーとか独りごちていたら、いつの間にかバーテンダーがファントムさんに!そこで対決のデュエットが歌われるんだけど、歌はいいんだよね歌は。二人は賭けをすることになった。クリスティーヌがファントムの曲を歌えばファントムの勝ち、ラウルは彼女と息子を置いて去る、歌わなかったらラウルの勝ち。ファントムは彼女を諦め借金も肩代わりしてやることに。ここで自分の不甲斐なさに目覚めたラウルは急いで楽屋に向かい彼女に歌わないでくれと懇願する。その後今度はファントムさんが歌えと迫る。さあどうするクリスティーヌ!(見ている方はどっちでもいいよと思っている)

舞台では前座としてメグがストリップまがいのショーをしており客席は大喝采。本人も満足していたがファントムはその舞台を見ていなかったと知り愕然とする。いよいよクリスティーヌの出番。長い逡巡の後彼女は歌い出す。これがタイトルソングの「Love Never Dies」。アンナ・オバーンの絶唱が光る!歌はいいんだけどなあ(2回目)。それを見て言葉なく去るラウル。賭けに勝ったファントムさんは歌い終わった彼女を待ち構え愛を確かめ合うのであった。しかしグスタフがいないことに気付き慌てるクリスティーヌ。何と絶望に打ちひしがれたメグが泳げないグスタフを連れ出し海に突き落とそうとしていたのだ!

可哀想なメグ。その境遇ではなく、都合のいいストーリー展開のためにここまでキャラ崩壊させられて。

ギリギリのところで駆けつけたファントムさんとクリスティーヌ。メグはグスタフを解放したが今度は銃を取り出し自殺しようとした。そこでファントムが活動する資金を拠出するためにお偉いさんと寝たなどと告白。必死にメグを説得して自殺を思い留まらせようとするファントムさん。いやいやアンタ他人を説得できるようなキャラじゃないでしょwその必死な表情に思わず笑いそうになった。しかし衝撃の展開はここからだった。ファントムさんに説得されて銃を下ろそうとしたメグだったが、何と彼が発した一言

We can’t all be like Cristine.

はあ?

はああ?

おっさん今何言った?「お前クリスティーヌじゃねーし」って突き放してどうするんだよ!それを聞いたメグは錯乱して銃を発射!それがたまたまクリスティーヌに命中!もー言わんこっちゃない。つーか間接的に殺したのファントムだろ。

ここで息も絶え絶えなクリスティーヌはグスタフに実の父親がファントムである事を告げる。ショックの余りその場を逃げ出すグスタフ。いやいやアンタのお母さん死にかけてるでしょ?側にいてやりなよ?ファントムと二人きりのシーンを作りたいのが見え見えでこういうご都合主義な所もうんざりなんですが。そしてファントムさんの腕の中で息を引き取るクリスティーヌ。最後悲嘆にくれるファントムさんにグスタフが近付き仮面を外すが今度は怖がらずじっと彼の顔を見つめるのであった。親子の情愛で締めくくり。

何か据わりの悪さというかモヤモヤ感が残るのですがその正体はこの世界倫理観がまるでないんだ。前作でファントムがクリスティーヌと結ばれなかったのは、人を殺めてまで愛を勝ち取ることはできないという厳然とした倫理観があったからと思うのですよ。実際クリスティーヌは彼の素顔を見て嫌ったのではなく、彼が殺人を犯したことに恐怖して逃げたのだから。それが今作では愛こそ全て、愛の前では倫理も道徳もクソッタレ。クリスティーヌはラウルと結婚が決まってたのにファントムさんと一夜を共にして子供まで作りそれを隠していた。ファントムさんもパリ・オペラ座で自分が仕出かした事件の責任も取らずアメリカに逃げて成功している。最後クリスティーヌは事故的に死ぬが自身の過ちを責められた訳ではない。登場人物が倫理を踏みこえるのは別にいいけど、作品世界においてそれが許容されているのがとても気持ち悪いなあと。無茶したらそれによって生じる責任も引き受けて欲しい。

ただここまでぶっ飛んだ作品なんで公式が続編とか言っても余りそういう目で見る人はいないのは不幸中の幸いというか。自分の脳内で都合よく前作と切り離して考えることができる。脚本が出来上がってからみんな必死で軌道修正しようとしたんだろうけど、むしろその過程をドキュメンタリーかなんかで見てみたいと思う、無理だろうけど。

これは駄作と言うよりも突っ込みどころが満載のトンチキ作品といった方がふさわしいかも?しかも一流のキャストの熱演が見られる贅沢なトンチキ作品。見終わった後はパルプンテを食らったような不思議な気持ちになりました。一度くらいなら見る価値あるかな?でもこのレビューを読んで満足してもらっても全然構わないと思いますw

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