「ホリデイ・イン」感想

最近リアルがせわしくてなかなかブログに取りかかれない毎日なのですが、そんな中5日間限定公開とかなり厳しい日程ながらも「ホリデイ・イン」見てきました。「ホリデイ・イン」とは何ぞや?という方に簡単に説明すると「ビング・クロスビーとフレッド・アステアが主演する1942年のミュージカル映画『ホリデイ・イン』を舞台化したものです」(フライヤーより)というもの。あの有名なクリスマスソング「White Christmas」もこのミュージカルから生まれたらしい。今までもレミゼやオペラ座やミス・サイゴンと言った有名作品の記念コンサートは全国規模で公開されていたけど舞台そのままを映画館でというのはとても珍しいとのこと。

まずはあらすじ。ライラ、テッドと組みショーの世界に生きるジム。しかしショービジネスに嫌気が差した彼は引退して、コネチカット州の農場を買って農業を始めることにした。ライラにプロポーズをして一緒に行こうとするが、ライラは大きなビジネスチャンスがある舞台を優先してからジムの所へ行くと約束し、ジムだけ先に新しい住居へ移った。そこで前の住人であるリンダと偶然出会う。リンダは今は地元の小学校の教師だが、かつては歌とダンスを学んでスターを目指した過去があった。やがて農業はうまくいかずライラもテッドに取られてしまい生活に行き詰まったジムは、家を改装して休日だけ開けてショーで宿泊客を楽しませるホテル「ホリデイ・イン」に作り変えることを思いつく。その年の大晦日、リンダを中心にしたショーを披露したが、そこへライラに捨てられたテッドが泥酔しながら乱入してきた。テッドは酔っ払いながらリンダと踊る。翌日酔いの冷めたテッドは昨晩踊った相手こそが自分の新しい相棒にふさわしいとリンダを探し回るが、ジムは阻止しようとする。ジムはリンダと恋人同士になっていたが、ライラに続きまたテッドに取られてしまうと心配したからだ。しかしそれはリンダの昔からの夢が叶うチャンスでもあるのだ…

内容は単純というか他愛もないと言うか、しかしそういう作品であればこそごまかしが効かないのですよ。ブロードウェイミュージカルだから当たり前だけどハイクオリティの歌とダンスに酔いしれる痺れる!才能を持った人たちの集まりなのは分かってるけどまーすごいすごい。アンサンブルも大活躍でとにかく豪華で盛り沢山。冒頭ジムとテッドが劇中のショーでライラを巡って「俺は歌ができる」「俺はダンスができる」とやるのだけど、2人とも歌とダンス両方うまいじゃんwと突っ込んでしまったw

元となった映画は私は見てないけど、いくつか批評を見ると内容どうこうよりもビング・クロスビーとフレッド・アステアのパフォーマンスが見所らしい。しかし現代に蘇った舞台版はそこんとこ微妙に変えてあって、ジムとテッドに見初められたリンダにより重心が置かれている。だから「一度は捨てた夢を再び追うべきか、愛を取るか」「都会で仕事の成功を追い求めるか、田舎の平凡な生活を取るか」といった現代でも通用するテーマが加味されていて、元の明るい雰囲気を残したまま今の時代にフィットするように変えたんだなと思った。

変えたと言えば、コメディの部分は昔90年代に日本でも流行ったアメリカのコメディドラマを思い出させたんだけどそれって私だけ?「フレンズ」とか「フルハウス」とか「ダーマ&グレッグ」とか「ウィル&グレイス」とか「ニュースキャスター マーフィー・ブラウン」などなど。最近こういうの見なくなりましたね。「ホリデイ・イン」には家を買った時に一緒に付いてきた謎の同居人ルイーズというキャラが出てくる。これは舞台オリジナルキャラで何と!2006年パジャマゲームBW再演版でグラディスを演じた女優さんがやっているというのだからびっくり!ルイーズは家の雑用を手がけるだけでなく、ジムにツッコミ入れたりお節介焼いたり時には真摯なアドバイスくれたりとストーリーに直接関わって来なくてもかなり目立つ存在である。彼女の存在がいいスパイスになっていて、かつ90年代コメディドラマ感を強めているのだ。そういや「マーフィー・ブラウン」にやはり家の改築を請け負う謎の居候キャラ(あれは確かおっさんだったはずだけど)がいたのを思い出した。

ここで「古き良きミュージカルを現代の解釈を取り入れて蘇らせた」「歌もダンスも惜しみなく披露する」と来て何かを思い出しませんか?そう!私には「これパジャマゲームと似てるじゃん!」という意味でも嬉しい作品だったのです!だからだんだん見てるうちに「これパジャマゲームのカンパニーでできないかな」とか「ここはアメリカぽいから日本人に受けるように変えても元の世界観は壊れないな」とか「トム・サザーランドが手がけたらどんなセットになるかな」などと考えてしまった。我ながら突拍子もないと思うけど考えるだけならタダだからいいんだよw!!しばらくパジャマゲームから離れてロスも和らいだかなと思ってた矢先だったのに…家に帰った後でまた動画を漁ってしまったではないか。

「ホリデイ・イン」が1942年、「パジャマゲーム」が1954年であることを考えると年代は離れているけど雰囲気はあまり変わらないんだなというのが意外。今のミュージカルは心情の移り変わりや人間ドラマに重きが置かれているけど、そういう傾向になったのは「ウエストサイド物語」辺りからなのかしら。現代の私達はそういった作品の方が親和性が高いのかもしれないけど、たまには理屈抜きで楽しめる明るい作品もいい!「こまけえことはいいんだよ」で有無を言わせず技術力で魅せる作品。でもそういうのは作るの大変だし特に日本では悲劇の方が手っ取り早く集客できるから敬遠されてしまうのだろうな。結局何が言いたいかというと「パジャマゲーム再演早よ!」ってこと。あれ?これホリデイ・インの話だったっけ。見に行けなかった方も多いようなのでハイライトの動画をあげときます。パジャマゲームを観た人ならおっと思う演出もありますよ。生で観たらもっと迫力すごいんだろうなー。

 

 

 

“「ホリデイ・イン」感想” への2件の返信

  1. ‪こんにちは!私、映画を上映したと勘違いしてました。舞台映像を映画館で上映したのですね。画期的ですね。‬
    ‪雑食さんは、トニー賞の授賞式のテレビ放送とか観ますか?毎年6月ですけど。今はWOWOW、以前はNHKBSで生中継されてたこともありましたけど、やっぱり、役者さんの層が厚いというか、日本とは違いますよね。あと、観客もかな。日本では悲劇が好まれるのかもしれないけど、かつては、Anything Goes とか大地真央さん主演 宮本亜門さん演出でやってて、すごく楽しい舞台でしたよ。‬
    ‪やはり、お客さん入らないとダメだから、どうしても悲劇?の再演ものばかりなのかも。‬
    ‪ホリデイイン、ダイジェスト版観ただけでワクワクします。‬
    ‪でも、日本人キャストで演るのは大変そう(^_^;)そういう意味ではよくパジャマゲーム、上演してくれたな、と思います。ぜひとも再演をお願いしたいですね!‬
    ‪フルハウスなどのシットコムは、アメリカではやってると思うけど、日本では、例えばフルハウスの現代版、フラーハウスはNetflix でしたっけ?それで放送されてますよね。有料チャンネルが増えて、選択肢が増えましたが、昔みたいに海外ドラマを手軽に楽しめる時代の方が、そこから世界が広がっていったのかもしれません。‬

  2. MKさんコメントありがとうございます!
    WOWOW見れないんですがトニー賞パフォはYouTubeで見てます。他にも感謝祭のイベントでもBWのパフォーマンスがあって日頃からミュージカルに親しむ文化が根付いてるんでしょうね。だから役者の層が厚いし、客層も老若男女バラエティ豊かでいいパフォーマンスには惜しみない拍手を送っています。ホリデイ・インでもショーストップが起きる程の喝采がありました。
    パジャマゲームは「何だ日本でもこんなのできるんじゃん」という嬉しい驚きがありました。こういう方が役者のスキルも上がると思うんだけど現実的には集客面その他で難しい問題があるんでしょう。ただでさえ舞台で収益上げるの大変みたいだし…
    MKさんが仰るように、私も偶然付いていたテレビで普段見ないような作品に触れてそこから世界が広がった経験がたくさんあります。今は確かにチャンネルが増えたけどわざわざ自分が見に行かなければなりませんよね。それだとあらかじめ知らなければできないけどどこで最初のきっかけを掴むの?という問題があります。難しいところです。

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