星組「ガイズ&ドールズ」

最近宝塚時代の北翔海莉さんの舞台の映像を観るようになってそのうち一言感想でも書こうかな〜と思ってるんですが、「ガイズ&ドールズ」は特にハマって何度でも観たくなるので独立して記事を書くことにしました。宝塚作品と言うよりブロードウェイミュージカルとして好きになったみたい。

「パジャマゲーム」もそうだけど私こういう明るい作品好きなんだなーと再確認。両者に共通するのはとにかく何も考えずに楽しめて幸せな気分になれること。そしてストーリーは他愛もないけどとにかく音楽がいいこと。問題提起とかどうでもいいから(いや戦争も差別もいけないのは分かってるよ?!)こちとら疲れてるんだとにかく楽しませてくれよ!!にズバリ応えてくれる。未来は今より更に良くなると何の疑いもなく信じられた時代の作品と言うのがよく分かる。実際アメリカが一番輝いていた頃だしね。

私は海外のミュージカル動画をチェックするのが癖になっているのですが、この作品は動画がとても多いんですね。過去にはユアン・マクレガーがスカイを演ったこともあったらしい。ブロードウェイやウエストエンドでも何度も繰り返し再演を重ねておりかなりの人気作品というのが分かる。パジャマゲームの振り付けをしたニック・ウィンストン氏も最近ツイッターで「今度『ガイズ&ドールズ』の演出するよ!」と言ってたし、今現在も英国初の黒人だけから成る劇団が上演して話題になってるとのこと。そういやジュリー・アンドリュースも好きなミュージカルにこれを挙げてたっけ。

内容は既に知ってる方が多いと思うけど一応説明しますね。1948年のニューヨーク。ギャンブラー達を相手に賭場を仕切るネイサン・デトロイトは賭博する場所を確保できずに困っていた。所場代として千ドルの現金が必要だが持ち合わせがない彼は、ラスベガスで大勝して来た友人のギャンブラー、スカイ・マスターソンに会い、どんな女でも落としてみせると豪語するスカイに「救世軍の女軍曹サラ・ブラウンを食事に誘えるかで千ドル賭けよう」と持ち掛ける。それに乗ったスカイはサラに近づくが、サラはスカイの胡散臭さに警戒しきり。スカイは「深夜の集会に1ダースの罪人を送り込む代わりに一緒にハバナで食事をしよう」とサラを誘う。とんでもないと一度は断ったサラだったが、人が集まらないことを理由に集会所の閉鎖を上司から告げられ、それを食い止めるために了承せざるを得なくなった。一方ネイサンには14年間婚約中のアデレイドというショーダンサーの恋人がいるが、のらりくらりと結婚を避けていた。しかしギャンブラー達と集まっている所を警察に見咎められ、咄嗟に結婚を祝うパーティーだと嘘をついてしまう。しかもサラの姿がない事を知り大ピンチ!ハバナでは、レストランでスカイに半ば騙される形で飲酒したサラが酔っ払い大騒ぎとなっていた。最高の気分と浮かれるサラだったが、酔わせてその気にさせるのは信条に合わないとスカイは厳しく戒める。それでも2人は惹かれ合い愛を語り合うが、ニューヨークに帰った時集会所がネイサンらの賭場に使われたことが発覚して、サラは集会所を空けるためにスカイに利用されたと思い決別するのだった…ここまでが1幕。

まずオーバーチュアからわくわくするのですよ!ネオンの看板が無数に並ぶニューヨークの街角を背景に種々雑多な人間が入り乱れる。金持ち、ギャンブラー、水兵、少年スリ、ホームレス、観光客、警官、ボクサーとトレーナー、大道芸人、商売女その他諸々。彼等がただ歩くのではなく何かをしていてそこに小さな物語があるので、それを追うだけで一気に物語の世界に引き込まれてしまう。

話の骨子はメインにスカイとサラの恋模様、サブにネイサンとアデレイドの腐れ縁カップルの二本柱を中心にギャンブラー達や救世軍がわちゃわちゃする。「お固い女がなびくか」を賭けのネタにしたり14年もフィアンセを放置するなど70年前の話ならではの部分もあるけど、主題は「どうしようもない男を女が変えてみせる」というものなので今でも通じる部分があるのだろう。それに宝塚の場合全員女性が演じるのでその辺の生々しさが緩和されているようにも思う。

次にキャストについて。スカイの北翔さんはこれぞ男役の美学!をぎゅっと濃縮したようなかっこよさ。銀幕のスターのような佇まいで男役というのは職人技なんだなというのがよく分かる。帽子の扱い一つでもつばをなぞる仕草やギリギリ目が見える角度で被る所など深いこだわりを感じる。足が長いからスーツ姿がよく似合うし1幕最後サラに誤解されて気落ちしたまま舞台奥に去る時の「背中で語ってる」感いいね!いいね!下水道の中に入る時に客席に向ける表情は反則だよ!こんなん惚れるわ!トム・サザーランド氏がこれを観て彼女の起用を決めたと言うので私も彼になったつもりで観てみたんだけどw、男性にも出せないスカイのセクシーさとか強さとか何度も大勝負に身を晒して来た凄みなどが新鮮に映ったのかなと考えた。でもこれがどうベイブにつながるのかまでは分からなかったwあと歌もね!ヤバいね!(語彙崩壊気味)彼女の歌を知ってから他に歌の上手い人はいくらでもいるのに何が違うんだろうと考えるようになったけど、とにかく「伝わる」んだよね。「I’ve Never Been In Love Before」の包み込むような温かさと言ったら!「Luck Be A Lady Tonight」のニヒルなかっこよさと言ったら!もうヤバいとしか言いようないよ!!

サラは娘役トップの妃海風さん。歌えるトップコンビっていいですね。この中で演技賞をあげるとしたら彼女にあげたい。融通の効かない堅物なサラが初めての恋の予感に戸惑う時の表情や酔っ払ってはっちゃけた時の天真爛漫さがお気に入り。ベロベロになってスカイに甘える場面演じる人によってはあざとくなりかねないと思うが、これがとても初々しくて可愛い。「If I Were A Bell」がとにかくキュートでこれが本当のサラの姿なんだなってのが伝わってくる。個人的にハバナのシーンが好きなんだけど、あのザ・宝塚!な演出も豪華だしスカイとサラのやり取りは何度見ても笑ってしまう。因みにドルセデリーチェって何ぞや?と調べたらミルクジャムのことらしい。つまりキャラメル味ってことですね。スカイは初心なサラにお子ちゃま味の飲み物(ノンアルコールとは言ってない)をわざと注文したという訳で。ワルですねw

ネイサンは紅ゆずるさん。ネイサンと彼女が融合したようなキャラでどこからがアドリブなのか分からない位ネタを仕込んでくる。14年もフィアンセを放ったらかしにしてひどい男なのだけど、どこか愛嬌があって憎めないから仲間も着いてくるしアデレイドも何だかんだ言って嫌いになれないよなあというのがよく表現できてて伸び伸び演じているのが伝わる。

結構おいしい役どころのアデレイドは礼真琴さん。男役の方と聞いたけどこれがめっちゃキュートでコケティッシュで最初観た時は驚いた。娘役でも違和感ないじゃん!と思ったが、よく見たら肩の辺りが逞しくてやっぱり男役かなと思い直したwとにかく歌がうまくて感心してしまう。コミカルな演技も上手だし。ただ惜しいのは、普通に若々しくてとても14年も婚約しているようには見えないところ。アデレイドに男役を充てるのは年増感を出すためだと思うけどこれだとその意味がなくなってしまうように思う。他の要素がとても優れて芸達者なだけにそこだけが残念。

他のキャストで気になったのはナイスリーの美城れんさん。宝塚って皆長身ですらっとした体型の方ばかりじゃないですか。でも本家の「ガイズ&ドールズ」ではギャンブラー達はもっとデコボコしたおっさん達だし、ナイスリーも太っちょ体型なんです。だから彼女の存在はとても貴重で作品に奥行きを与えていると思う。おまけにコミカルな演技も歌もうまくて太めの体型に矯正してるのにダンスにキレがあって重要な役どころをきっちり務めていたのがとても印象に残った。

全体的に皆楽しみながら演じているのがこちらにも伝わってきて幸せな気分になれる。これなら生で舞台観てみたかったな。宝塚って脚本が惜しいなあと思うこと多いけどやはり海外ミュージカルはその点安心して観ていられる。私のような初心者向けなんじゃないかな。最後に全然関係ないけど今現在マンチェスターで上演されている全員黒人の劇団の「Luck Be A Lady Tonight」がよかったのでオフィシャル動画をペタリしときますね。色んなバージョンがあって見比べるのが楽しいけど、海外の一流パフォーマーと比べても北翔スカイはお気に入り。ただパジャマゲームの動画見るとすぐに「ベイブちゃん可愛い(デレデレ)」に戻ってしまうのが何とも不思議wパジャマゲームの再演早よ!それが難しいなら実力者集めてまた面白いミュージカル上演してくれ!北翔さんの歌って踊るところもっと見たいです!って結局結論はいつもと同じになってしまったw

 

 

 

 

 

 

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