映画版「パジャマゲーム」

こんにちは。貰えるものは貰っとこう主義で風邪まで頂いてしまった私です。えっらい寒さで身体が冬眠モードなのと風邪が長引いてブログネタのインプットもアウトプットもできず悶々とする毎日。それでも更新せねばという欲と義務感で、これまた昔の引き出しを引っ張り出して記事を書くことにします。今回は映画版の「パジャマゲーム」(1957年)について。舞台初演が1954年なので3年後に映画化された訳ですね。

ミュージカルを映画化した作品は沢山あるけど、映画に移す際に内容をいじってしまうケースが実は少なくないんですね。しかしこれは舞台版に忠実に作られた幸運な作品。映画の尺に合わせるために削ったシーンはあるけれど。舞台版(ここでは1954年初演版を基準としてます)から削られたのは主なものでは
①シドの「A New Town Is A Blue Town」
②プレッツの「Her Is」(メイが歌うRepriseも)
③舞台の1幕最後の「Hey There(Reprise)」
④ハインズの「Think Of The Time I’ll Save」
⑤ヘルナンドスハイダウェイの後のハインズ妄想シーン
⑤は今回の舞台版でもなかったから分からない方が多いと思いますが、ジェラシーが頂点に達したハインズが男を取っ替え引っ替えするグラディスを妄想するシーンがあったんですw因みにこの後ハインズは会社に押しかけてシドとグラディスめがけて(ついでに社長も巻き込まれる)ナイフを投げるのですがそのシーンは映画版にあります。今回の舞台版との相違点については過去記事に詳しく書いているのでそちらを読んでくださいね。

さて本題の感想ですが第一印象は、「すごく面白いという程ではないなw」。内容は同じなのにこうも自分が見た舞台版と印象が違うとは。うまく説明できないけど大味と言うか。もちろん個々のシーンはいいんですよ、大体舞台と同じキャスト使ってるから歌唱も吹き替えはいないしダンスもクオリティ高い。ただ古い作品だから今と感覚違うところがあるし、カットしてるシーンがあるから脚本の粗が目立ちやすくなり場面の転換がぶつ切りに感じられてちょっと荒いなあというか。これは時代のせいなのかお国柄なのか分からないけど、シドがやや強引で俺様色が強い。ベイブに一度玉砕した後ピクニックの場面で何事もなかったかのように「苦情処理委員さんに一言あるんですがね」なんで軽口叩くし、ベイブに復縁を説得するシーンはついかっとなって「女王さまにでもなったつもりか?!」なんて言ってて、見てる方は「えっ?それっ?ちょっ??」と戸惑ってしまう。意地悪な見方をすれば、都会から来た鼻持ちならない男が田舎娘を簡単に引っかける話のようにも見えてしまう。だから今回の舞台でシドとベイブの解釈変えたのは今の価値観の観客でも楽しめるようにするためなのかなと。でも大きく変えた訳ではありません。2人の年齢とベイブの境遇の話と「僕はね、寂しいんだよ」の下りを追加したくらい?(そういや新納さんが言ってた一番恥ずかしい台詞ってここだと思うんですがそろそろ答え合わせしてくれませんかね?)あとはキャストの演技で大分受ける印象が変わるのだから役者さんってすごいですね。シドの強さがベイブの弱さを補い、ベイブの強さがシドの弱さを補うという構造を今回の舞台では意識していたように思う。

映画のベイブはドリス・デイで私が唯一この作品で知ってる役者さん。髪型もかなり短くて俺様なシドと対等に張り合う姿は勇ましく頼もしく感じる。「I’m Not At All In Love」でリンゴかじりながらシドとぶつかるシーンはやんちゃでかわいいwでもシドと抱き合った時にすごく色っぽい表情をするのでびっくりしてしまった。元々健康的で明るいイメージなだけに。

ただ、主役よりもこの作品で一番活躍してるのは実はグラディスなんです!Carol Haneyという方で舞台でも同じ役だったらしいけど、「Steam Heat」(前記事でも書いたけど元々はグラディスが踊る場面)「Hernando’s Hideway」はもちろん「Once A Year Day」でもかなり目立っている。本当に踊りがキレキレで私のような素人でもすごい人だと分かる。スチームヒートも本当は社長秘書が組合を鼓舞する余興に出るのは変なのでグラディスがこの人だったからこその出番なんじゃないの?と個人的には思っている。今回の舞台版グラディスはマリリン・モンローを彷彿とさせるようなセクシーな見た目だったけど、映画のグラディスはベリーショートでハスキーボイスな姐さんタイプなんですよ。

先述した通り全体で見るとちょっとブツ切りなんだけど個々のナンバーは素晴らしい。特に「Once A Year Day」は開放感と躍動感が溢れ出ている。大人数の大人が丘を駆け上り土埃を巻き上げながらはちゃめちゃ踊る様は壮観。もう笑っちゃうくらいすごいんです、生きる喜びみたいのがみなぎっていて。あと衣装がおしゃれ。サマードレスが可愛くて憧れる〜。50年代のファッションっていいですね〜。

結論としては「映画もいいけど、再演いつよ?」おっとまた同じこと言ってしまいましたね。そろそろまとまらなくなりそうなんで締めようと思うんですが、せっかくなんで最後に原作小説「7セント半」のあらすじを紹介します。私も原作読んだわけじゃなくてwikiの意訳に過ぎませんが。英語得意じゃないんで間違ってる所があったらごめんなさい。

スリープタイト社は長い休暇で不在中のオーナー、TJオハラに代わり、ハスラー社長が会社を経営していた。7セント半の賃上げを巡って労組と対立するハスラー。そこへ新任工場長シド・ソローキンがやってきた。
シドはベイブ・ウィリアムズと恋仲になる。しかしハスラーから要求を突っぱねられた労働者たちがベイブの提案によるノロノロ作戦を遂行したことでベイブから疎遠にされる。
クリスマスシーズンで注文が殺到してるのに業を煮やしたハスラーは、ベイブをクビにするようシドに言い付ける。しかしそんな事をしてはストライキが起きてしまうとシドに説得され何とか思い留まった。一方シドも憂鬱な週末を過ごしていた。ベイブが叔父の葬式のためウィスコンシンまで行ってしまったからだ。シドは酔っ払いお金持ちのワトソン家のパーティに行き、我儘な跡取り娘からベッドに誘われたのだった。翌週の月曜日、組合の代表とハスラーとの交渉は決裂、翌日の火曜日にはハスラーに雇われた有名な経営コンサルタントがやって来たが、反対に組合の要求を飲まなければならないとハスラーに告げた。ハスラーはコンサルタントを解雇、だが今度はコンサルタントが休暇中だったオハラを連れて来た。オハラはハスラーに、3つの州40店舗のビジネスがダメになりかかっているから早く仕事を進めろと叱りつけたのだった。
シドは労働者たちに7セント半の賃上げが実現されたと告げる。ハスラーはシドと話を付けようとしたがシドは拒否、スリープタイト社を辞めると宣言し自分のアパートに戻って来た。そこにはベイブの姿が。ベイブも会社を辞めたという。2人はハネムーンの計画について相談を始めるのだった。

これはあらすじに過ぎないので何とも言えないけど、一つだけ言えるのは「よくこれをミュージカルにしようと思ったな〜」ということ。結構内容変わってるし、他の個性的な脇キャラ達は原作から存在していたのかも気になる。当時の書評では「資本家と労働者の対立を端的に、面白おかしく表した作品」みたいな評価だったらしく、私としては「うーんそうなのかー」としか言えない。それがあんな面白いミュージカルになるなんてねえ。よく分からないものですね。

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