録画していたメグレ警視シーズン2やっと見ましたー。シーズン1と同様2話収録なんですが、今回第2話「ピクラッツのメグレ」(原作は「モンマルトルのメグレ」)は偶然にも原作本を読んでいたので今回2話の話題ばかりになってしまうことをお許しください(そうでないと「面白かった!」で終わってしまうので)。ネタバレはないと思います、多分。
2話の簡単なあらすじ。ある晩アルレットと名乗るダンサーが警察を訪れる。店の中である男が伯爵夫人を殺す相談をしていたとメグレに話すが、突然「オスカル!」と叫び逃げてしまった。間もなくアルレットが自宅で殺されているのが見つかり、後から伯爵夫人も殺害されていたことが分かった。実はメグレの部下ラポアントはアルレットに一目惚れして彼女に結婚を申し込んでいたが、彼女が殺されたと知って衝撃を受けた。アルレットと伯爵夫人の人生を辿るうちに2人の接点と犯人の輪郭が浮かび上がってくる…
えーと、ここら辺既に原作と微妙に違うんですね。原作では店が終わった明け方にアルレットが訪ねてきたけど酔いが覚めるうちにだんだん供述が曖昧になってグダグダのまま去って行くのです(もちろんこれには理由があるのですが)。
このように全編に渡って原作と微妙に変えてきている所がちょこちょこあります。もしかしたら今までも改変はあったけど私が原作を知らなくて気付かなかっただけなのかも?ただ今回の改変はなぜそこ?意味ある?変えない方がよくない?が多くていちいち引っかかってしまった。
一番大きな変化はキャラ設定を変えてるんですね。原作では犯人以外は善とも悪とも言い切れない多面性のある性格として描かれている。例えば被害者のアルレットは場末のキャバレーのストリッパーなんですが自宅は潔癖な位に整えられており、ラポアントからすれば天使なのに彼女を勘当した親戚からはビッチ呼ばわりされてます。そしてそのどちらの評価も間違っていない。しかしドラマではもっと視聴者が感情移入しやすくするように設定が変えられていて善寄りに描かれている。逆に「ピクラッツ」のマスターのフレッドは踊り子達に手を出すしょーもないオヤジなんですが老後は田舎で奥さんとゆっくり暮らすのを夢見る小市民なんです。しかしドラマでは…見た方はわかると思いますが悪寄りに描かれていて何だか可哀想。メグレもピクラッツに不思議な居心地の良さを感じて後半はそこを拠点として居座って犯人を追及するのですが。あと他にも伯爵夫人やフレッドの奥さんも…全体的に「男は悪寄り女は善寄り」に改変されていて、原作にあった「清濁合わせて飲み込むメグレの度量の深さ」「善にも悪にも振り分けられない人間の業の深さ」が損なわれたように感じてちょっと残念…(原作1冊しか読んでないのにこんな偉そうなこと言ってごめん!!でもそれこそがメグレシリーズの魅力に思えて!)
そう!ラポアントの描写も思ったよりあっさりして何だかなあだったんですよ。ラポアントは若くて純情なメグレの部下なんですけど、彼女が殺されたと知って怒りと悲しみで打ちひしがれるんです。シーズン1で各方面から板挟みになるメグレの苦悩をこれでもかと描写したこのシリーズなら、ラポアントもみっちりやるだろうなと思ってたら案外あっさりしててあれ?こんなもん?と言うか。原作は長編だから物語の筋を追うのに忙しくてせかせかと過ぎてしまったのかな〜という印象でした。ラストも原作は笑いと哀愁とほろ苦さがないまぜになった味わい深いものだったのでそのままやって欲しかったなあ…
逆に「ここは変えてくるだろう」と思った所が変えてなかったのが意外でした。それは後半薬物中毒のゲイの青年が登場するんだけど「現代では不適切な表現ですが当時の事情を踏まえ〜」案件なんですね。つまり昔の偏見混じりの描写なんです。しかしそこんとこは案外忠実に描写(警察の脅迫まがいの取り調べまで)してたんでちょっとびっくり。
しかしもし原作を知らなかったら普通に楽しめていたと思うんです。現に1話は普通によかったし。でももしかしたら1話も原作の方が面白いのかもしれないと疑いの目で見るようになってしまったwそういえば◯◯が◯◯と知ってメグレの衝撃と葛藤がもっとあってもいいなとか…(ネタバレになるから詳しく言えないっ!)1話もkindleで買えるから読んでみようかな…そうなんです!現在メグレシリーズは絶版になっていて電子書籍で読むしかないんです!それも一部の作品のみ…いやいやこういう形で読めるのはむしろ幸運なケースだと思う。流行らなくなったという理由で手に入りにくい名作は他にごまんとあると思うんで…
一つだけ言えるのはローワン・アトキンソンの名演は鉄板ということ。もう最初からMr.ビーンを思い出すことなんてなくなった。他にも目の保養になるような麗しい俳優達がてんこ盛りです。文句ばかり言ってしまったけど十分楽しめるので機会があればぜひ見て頂きたいと思います。ホントNHK辺りが買えばいいのにと思うのよ。
20180426追記
追記ばかりしてカッコ悪い…こんなことになるなら最初から書き直したいという衝動に駆られたのですがフェアじゃないかなー(変なとこで潔癖w)と思い最初の記事から日を待たずに付け足します。
というのも先に書いた通り1話の原作を読んだんです。そしたら「どうしてこうなった」と言いたくなるくらい違ってる!2話の改変でぶーたら申しておりましたがその比ではない!どれ位違うかというと「犯人の1人がドラマオリキャラ」なんです!2つの話を一つにまとめたのかなー??とすら考えてしまった。
1話の原作は「死の十字路」という作品なんですが、外国のミステリー小説って最初に人物紹介があるでしょ、そこに1人名前がなかったんです。そこであれ?と思って。いくら読み進めても出てこないし話はどんどん進むし。キーパーソンの1人が出てこないとなると当然ストーリーもドラマとは微妙に違ってくるし、内容知ってるはずなのに新鮮な気持ちで読むことができましたw
しかも原作の方が面白いwwwメグレシリーズの特徴にキャラの掘り下げが深い(過去や背景まで手に取るように分かる)というのがあります(と私は思う)。シーズン1ではその辺ドラマでもちゃんと伝わったけどシーズン2ではどうなっちゃったの?書き込みが浅いと言うか「何でこのキャラはこんな行動を取ったの?」と疑問に思った所がちらほらあったり。それも原作を読むとちゃんと腑に落ちる。原作をそのままトレースすればよかったのにドラマ版ではなぜキャラを増やして話を複雑にしてしまったのだろう?無駄にかき回したとしか思えん。
いや、上で「1話は普通に面白い」って書いたばかりなのにwでも原作を読んでしまうと考えを改めざるをえないんです。2話もそうだけど原作を知らなければ普通に楽しめる。でもそれは原作に含まれていた面白さであってドラマ用に改変した所の効果ではないんですよ。私も昔は原作原理主義者だったけど今はかなり柔軟になってきた方だったんです。でもこれはむむむ…シーズン1の「頭がヒリヒリするような緊張感」はどこへ行った?!
あとこの話に出てくる女性はちょっと病的な匂いのするアンニュイな美女がよかったんだけど…いや確かにきれいな女優さんだけど…「イギリスドラマの法則」(別名「何でイギリス女優は美女がいないんだよ!」法則)にハマってる気がするwいや、普通のキャラならむしろ好感が持てるのだけど絶世の美女とかファムファタールみたいな設定の時はもうちょっと考えてよwwwと思ってしまうwでもそんな所を含めてイギリスドラマ好きですよw