「蘭 RAN 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜」感想

「蘭 RAN ~緒方洪庵 浪華の事件帳~」(今初めて正式名称確認したwタイトル長すぎw)観てきました。東京公演が5日間しかなく千秋楽のマチネにやっと観に行ったんですが、CDは売り切れるしこれならもっと早くから観ればよかった!となりました。ツイッターにも書いたけど大大大満足で色々他のも見るけどやっぱり北翔さんはいいなあと再認識。うわあすごい…見とれてしまうわ…追いかけたくなるわ…でも何より嬉しかったのは舞台全体の完成度が高かったこと。彼女のパフォーマンスだけがよくても他がダメなら満足はできなかったですよ。サービス精神たっぷりで老若男女問わず楽しめるエンターテイメントでした。もう全公演終わったんでネタバレ気にせず書いちゃいます!

観る前に原作本も読んだんですが、原作はシリアス基調なんですよね。左近と章の出会いから次第に惹かれ合う様が丁寧に時間をかけて描かれる。それと同時に章の成長物語でもあるんですが、最後己の未熟さを痛感して医学の道を極めるために江戸に向かう。左近を守れる男になりたいという気持ちが江戸行きを後押しするのだけど、それには彼女と離れなければというのが切なくてねえ。左近の複雑な生い立ちとか在天別流の謎とか闇とか素敵なお兄様とか原作なりの深みとよさがあるんだけど、舞台ではそこんとこ割り切って(ちょこっと言及されるけど)「悪を懲らしめ大阪の街を守る(ヨッ!)在天別流!」なんですよね。しかもコメディ強めで明るい人情喜劇に仕上げている。それなのに原作のエピソード3つを破綻なくまとめて、キャラクター設定を崩さずオリキャラもうまく溶け込ませ、なおかつ短い尺で2人の出会いから別離までの心境の変化を自然に見せることに成功したのがすごかった。原作からかなり変えているのに基本はきちんと守っている。原作者の築山先生も大満足だったらしいのも頷ける。何気におっと思ったのがおあきとおゆきを姉妹設定にして2年の別離としたところ。原作では「松前藩から来たおゆきの方言ですぐに身元が割れてしまうのでは」と思ったのでよく考えられているなと思った。ただ山城屋はあれだけのことをして見逃されたのはおいwwwと思ったけど神保さんこと相棒のラムネ好きだしまあいいかw(いいのか?)

 キャストの皆さんも元宝塚の北翔さん始め、松竹新喜劇、2.5次元舞台、テレビで活躍する俳優たちを集め、それぞれが持ち味を生かしつつ一つにまとまっていたのがよかった。荒木さんの若狭は原作よりとっつき易かったけどやっぱり若狭らしくかっこよくて見せ場たっぷり、耕介も頼りなさげだけどおあきのために奮闘する姿がいじらしかった。瓦版の三吉はオリキャラなのに物語に馴染んでいたしアドリブ頑張ってたw テレビでお馴染みの石倉久本夫婦も息ぴったりで流石、久本さんは松竹新喜劇にもよく出ているらしい(ロビーにフライヤーが置いてあった)。扇次郎さんは若いのに基礎がしっかりしててとにかく安心して見ていられた。原作よりギャグキャラだったけど確かにあの真っ直ぐで誠実な章だった。中央の人が信頼できると舞台に背骨が入ったようだなと思った。

そして我らが北翔さんですよ。立て板に水で浪華講の説明をしながら花道から登場。そこで空気が一変するのね。場の空気を一気に惹きつける。淀みなくすらすらと台詞をつなぐのも驚愕なんだけどキラキラオーラが半端なくて。私の時は花の香りはしなかったけど演技で十分伝わる。それくらいぱあっと花が咲くようだったもの。章が一目惚れしたのも分かる。

更に歌!私が観たのは千秋楽日だったので事前情報で1幕最後は泣けると聞いていたのですが、それまでどっかんどっかん笑わせて本当に泣きのシーンあるの?と思ってたら歌だったのねー。確かにあれは泣けるわ。ここに来てよかったと思ったもの。途中から扇次郎さんと舞いながら歌うんですよ、それがまた2人ともかっこよくて。歌が終わったらえ?もう1幕終わり?となってしまった。

2幕はもっと左近大活躍。二刀流も見せてくれて、2本目の刀抜いたの早すぎて私分からなかったw めちゃかっこいい左近ですが龍笛を壊されてあっと動揺、そしてラスト章との別れでは女性らしい繊細さを見せているのがとってもギャップ萌えで。女らしさが全然わざとらしくなくてすんなり受け入れられる。この役は一見男役の本領発揮!と見えるけど、確かにそういう点はあるけど、ベイブやお銀を経験していなかったらもっとぎごちないものになっていたのではないかな。それが今回は気負いが感じられなかった。見る側の心構えの変化もあるだろうけど。

今回の舞台で彼女と和物との相性の良さはよく分かった。水を得た魚のように生き生きしていたもの。これからも定期的に和物の舞台に出て欲しい。自分が和物のプロデューサーだったら歌演技踊り三拍子揃ってる、殺陣もうまいし龍笛も吹ける人物がいたらうちで抱えようと思うくらい欲しがると思う。でも!こんなにいい舞台を見せて貰った直後にこんな事言うのアレなんですが今回のはまだ彼女の引き出しにあった部分だとも思うんです。安定感抜群の確かな芸を見るのはもちろん嬉しいけど、ベイブのように必死に苦しみながら道を切り開く姿も好きなんです。だって彼女を見てると色んな可能性を感じるから。あれもできるんじゃないか、これもできるんじゃないか、高く険しい山だけど登頂できれば誰にも見えなかった景色が見えるんじゃないかとかドSな期待をかけてしまうんですよ。単純にミュージカルが観たいという話じゃなくて(いや観たいけどw)これまで見たことのない顔を見たい!ということです。宝塚時代は映像でしか見たことのないどニワカな癖に生意気なこと言ってごめんなさい…まだよく分かってないくせに変な期待かけすぎかも…自分のブログで好き勝手言ってるだけだから許して…

弱気になったところで話変えます。今回初めて新橋演舞場に行ったのですがスタッフの応対の丁寧さ、お食事処や土産物屋の充実ぶりを目の当たりにして今まで自分が行ってきた劇場が(日比谷周辺の立派な所は別として)ただの箱のように思えたw ホスピタリティというかおもてなしの心が伝わってきて、お芝居を見るだけでなく「体験する」施設なんだなという印象。屋上に遊園地があった時代の百貨店を少し連想した。メイン客層がシニア世代だから演目にテレビでよくみる顔を出しつつあの手この手で楽しませようとしてるんだろうな。お金も時間も余っている層向けという感じがするが、自分が行く所も少し遊び心を出して欲しいw いやまず演目ありきなのは変わらないですが。でも新橋演舞場のホームページ見たら最初に食事のメニューがドーンと出ていて演目案内は下の方に小さく載っているだけ。これ誰が見ても劇場じゃなくて和風レストランのホームページだろwww 興味もったら確かめて下さい、笑ってしまうと思うw

“「蘭 RAN 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜」感想” への2件の返信

  1. 再演蘭大千秋楽観てきました。笑い声、歓声で盛り上がったラストでした。
    にも拘わらず、満足感の残らない自分が残念でした。好みの問題もあるんだろうけど、お芝居の上手さ、舞台の完成度などが自分には分からないからだなあとこのブログを再読させて頂いて気づきました。毎晩遅くまで稽古したという藤山さんや、できなくて稽古が辛かったという若狭役の大川さんらが努力して作り上げたものが分かるには、観劇経験がもっと必要なようです。
    が、楽しめなかった一番の原因は、今日の雑食さんのツイート、北翔さんの「世界が閉じていく」ことが引っ掛かっているからだなあと思います。
    宝塚は多少知ってても北翔さんの存在は知らず、パジャマゲームで初めて知って一気に惹き付けられました。厳しいブロガーの方の「主役になり得なかった。一人では場を持たせられなかった。」というご意見を読んでもそうは思えませんでした。横の女優さんに比べるとややナチュラルさに欠けるかなとは思ったものの、素晴らしい歌声と魅力的な舞台姿。その後映像で見た「メリーウイドゥ」は、何回見たか分からないくらい見ました。
    楽しい躍動的な舞台で歌い踊る北翔海莉が見たいと切望します。まさに「パジャマゲーム早よ❗」です。
    事務所に所属しないことが舞台を限定してしまうのか、はたまたご本人のこだわりか。ファンとしては、やきもきするところですよね。
    もうあんな舞台は見ることができないのかなという懸念が湧いて蘭を楽しみきれなかった気がします。

    人のブログへのコメントなのに、自分の思いを書き連ねてしまって申し訳ありません。こんなことはしてはいけないのかもと思ったものの、今日の雑食さんのツイートに強く強く共感し、長々書いてしまいました。多彩な場で、もっともっと開花させてほしい、あの才能をと、願わずにいられません。  

    1. コメントありがとうございます。これは去年の記事でして、今年の再演は観に行かなかったんですよね。この記事書いたのは観劇の直後でテンション高かったのですが、冷静になってみると去年観たばかりだしいいかな…と思ってしまって。
      私もパジャマゲームで彼女を好きになったクチです。当時厳しい意見が出たのも少し分かるんですよね。宝塚時代は三拍子揃った優等生だった彼女が男役から女優への転身に苦労しているのが見て取れましたから。でも優等生な姿より新しい何かを掴もうともがくほうが見てて燃えるんです。私はそれ込みで彼女のベイブを評価します(もちろん私情入りまくりのファン目線なのは認めますが私は評論家ではないのでw)。
      当時より進化した今の彼女でまたパジャマゲームが観たい。そうでなくても色んな人と組んでもっと冒険して欲しいなあと思います。色んな切り口の彼女が見たい。私も個人事務所のことは気になっていて、少し前にあったトラブルの件でも限定記事の中で「事務所に入って欲しい」と書いたことがあります(現在は削除)。とにかくあれだけの才能と魅力があるのにもったいない、これに尽きますよね。同じことを考える人は実はもっと多いと思います。

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