1ヶ月以上も空いてしまった、しかも最近観劇ブログになってるし…ここで余りリアルの話したくないけどストレス溜まりまくりんぐで疲れてるんですよー。と言い訳はこの辺にして、最近月一回は観劇行ってリフレッシュしないとやっておれん!状態でして6月は「シークレットガーデン(原題 The Secret Garden)」を観てきました。「小公女」「小公子」でお馴染みのバーネット夫人が書いた児童小説「秘密の花園」が原作。私も子供の頃読みましたよ、バーネット夫人の作品ではこれが一番好きでハウス名作劇場で取り上げてほしかったなーと今でも思ってる。
一言で言うと面白かった!最後心がじんわりと温かくなりました。原作に割と忠実なのも好感持てた。インドで暮らしていたメアリーがコレラで両親を失い、ただ1人生き残りイングランドの叔父アーチボルトの家に引き取られる。そこで長年見棄てられた庭園を発見して女中マーサの弟ディコンと共に庭の手入れを始める。ひねくれ者で病気がちだったメアリーは庭を蘇らせる中で生きる活力を見出し心身共に元気を取り戻す…ただし原作は子供中心のストーリーだったのが、本作では大人達のドラマの比重が大きいです。そしてアーチボルトの亡くなった妻リリーを始め、メアリーの両親などの死者(やはり幽霊という概念なのかな)が生者と並んで舞台上にいて同じ強度で存在しているのが舞台表現ならではで、どこかゴシックロマンスを連想させました。原作は決してゴシック要素はないはずなんだけどなあ。あと「ジェーン・エア」や「嵐が丘」といったブロンテ姉妹ぽさもあったな。
音楽もよかった!一回で耳に残る派手なナンバーはないけどしみじみと美しいメロディでいつまでも聴いていたくなるんです。一番有名なのはアーチボルトと弟ネビルによる「Lilly’s Eyes」かな。拍手も一番大きかった気がする。これだけでも観る価値るよ!メアリーの目に愛する人の面影を見出し苦悩する兄弟のデュエットなんですよ。ハリポタ読んだことのある方は「おっ」と思いませんか?偶然かもしれないけど面白いですね。
舞台装置もとてもセンスがよくて私は気に入ったけど、シンプルなので観る者が想像で補わなくてはいけない部分がある。例えば花で埋め尽くされる花園の様子は照明と背景の色の変化で表現されるだけ。コマドリの存在もフルートの(ピッコロだったかな?)音色と演者の演技だけで分かるようになっている、などなどシンプルな空間で観る者がイマジネーションを広げていく構造になってるんです。
次に登場人物たち。この辺からネタバレ気にせず行くんで注意して下さい。先にも言った通り大人に力点が置かれていて特に屋敷の主人アーチボルトと若くして亡くなった美しい妻リリーの2人の愛が根幹にあります。メアリーはリリーの妹の娘に当たるんですね。アーチボルトは背中が曲がっていて(猫背と劇中では表現されているが本当は「せむし」なんだろうな)容姿コンプレックスも相まって偏屈で非社交的で回避的な性格。妻の死の悲しみから未だ立ち直れず美しい思い出の中に引きこもっている。メアリーがやって来ても会いたがらないが嫌いという訳ではなく、人前に出るのが極端に嫌なだけ。リリーとの間に一人息子コリンがいるが、愛してはいても正面から向き合う勇気がなく殆ど関わらないetc…とまあ面倒臭い人なんで説明が長くなったw 息子が寝静まった部屋に来て本を読んでやるシーンが泣けるんだけど、起きてる時に読まなきゃ意味がないじゃん!!奥さん亡くしたのは可哀想だけど子供に迷惑かけんなよ!!等と突っ込みたくなる気持ちにも駆られてしまうw
そして息子のコリン。父親がそんなんだから彼もひねくれて育ってしまって。元々病弱だったのもあるけど父の遺伝で息子まで側弯症になったらまずいからと(遺伝する病気じゃないんだけど当時はそう信じられていたのかな?)背骨に負担がかからないように歩くことを禁じられて車椅子とベッドでの暮らし、「あの子は若くして死んでしまう」という召使いの噂話を信じて自分はどうせ死ぬんだとヤケになりワガママし放題の手に負えないガ…子供になってしまった(いや、実際メアリーもコリンも厳しい境遇でこうなった訳だしメリポピ姉弟に比べりゃ可愛いもんですw)。
さらに舞台版では原作にいないキャラも出てくるのです、アーチボルトの弟で医師のネビル。こちらは兄と違い常識人で社会に適応できている。しかし内実は彼もまたリリーを愛しており、彼女が兄を選び死んだ後もその想いは変わらなかった。全く面倒な兄弟だぜ!メアリーの出現によってアーチボルトとコリンがざわざわするのを見て、彼女を寄宿舎に追いやろうとする。しかし彼自身メアリーが何らかの変化を起こすことを恐れているようにも見える。これはアーチボルトが心のどこかで変化を望んでいるように見えるのと好対照。ネビルは彼なりによかれと思って行動してるんだけどメアリーに「おじ様とコリンが邪魔なんでしょ!」と言われるのは流石に可哀想だった。潜在意識で確かに思ってるのかもしれないけど自分では気づいてない訳だからねえ…ラストでアーチボルトに言われる言葉も…思わず笑ってしまったけどw不憫な人ですw ロッテンマイヤーさんと同じ「子供の頃は嫌な奴と思ってたけど本当はいい人だったんだ」カテゴリーに入ると思うw
とまあ屋敷の住人は揃いも揃って病んでるんですがw 召使いのマーサとその弟のディコンが生命力に溢れていて癒しの存在。そこへメアリーがやって来て、彼らの助力を得ながら秘密の花園を再生し、閉じていた人間の心も蘇らせるのです。そのきっかけがリリーの遺した庭園であり、リリーの肉体は死しても思念は残っていてメアリーを導き愛する家族をも救ったということなのかな。人は死んだ後も生きている者の心の中で生き続けて影響を与えるというのがこの舞台で言いたいことの一つなんですかね。
さて、演者の方々についてです。アーチボルトは石丸幹二さん。私はスカピンのパーシー以来だけどキラキラ王子より弱いダメ人間の役の方に魅力を感じてしまうw リリーは花總まりさん。生で見るのは初めてだけどこの世の者とは思えぬ美しさでした(実際幽霊の役だけどw)。とにかく立ち居振る舞いが優雅。歌は他にも上手な人いると思うけど、精霊というか慈愛の聖母というか永遠の恋人というかそんな浮世離れして幽玄とした雰囲気出せる人なかなかいないと思う。ネビルは石井一孝さん。おっパーシー&ショーヴランコンビじゃないですか!さっきも言ったけど石丸さんとの「Lilly’s Eyes」は本当にいいです。マーサの昆さんは可愛くてすごく歌が上手かった!ディコンの松田さんはとにかくキラキラしていて勢いを感じました。そして子役の2人が本当によかった。子役なんて言ったら失礼なくらい。私が観たのはひなたちゃんとリッキー君だったけど。これのBW初演が1993年と聞いてなぜ日本で今まで上演しなかったんだろうと考えたら才能に溢れる子供が見つからなかったからなのかな?と思った。
100点満点かと言われるとそうではないんですけどね、大人に比重置いたから子供が成長していく描写が少なくなってしまったな(特にコリンの登場が遅かった)とか、花園の扉見つける描写も欲しかったよねとか、あれでコリン歩けるようになるの?クララだってもう少し努力したよ?とか、ベンはどこから花園に出入りしてたの?とか色々疑問はあるんですけど、こまけえことはいいんだよ!他の要素がずば抜けていいのですっかりお気に入りになりました!
噂ではこれ来年にBWで再演されるらしいですね。その時はまたブラッシュアップされるのかな?時間があればもう一回観たい。昔読んだ原作も久しぶりに読み返したくなりました。あと猛烈にイギリス行きたくなりました。特に今のイングリッシュガーデンが美しい期間に。モデルになったというお屋敷も見たい!でも行けない!あーっ!(ゴロンゴロン)