「タイタニック」感想

いや~来ましたよ本命が!「パジャマゲーム」をきっかけに「趣味:観劇」になってから一番楽しみにしていた作品が!トム・サザーランドの創り出す世界に惹かれて「タイタニック」楽しみにしてました。でも私は悲劇よりも喜劇の方が好みで。と言うかエネルギーが低い人間なので悲しい作品は精神が消耗するからとつい敬遠してしまうんです。だからこの作品も楽しめるかな?とちょっと不安でした。皆さんご存知の通り結末は変えようない訳だし。例によって演出面も含めてネタバレ全開なので未見の方は注意して下さい。

この作品はこれといった主役がいない群像劇。登場人物も実在の人が実名で出ていたり、そうでない人もモデルがいたりします。沈没した理由にも触れられるけど、原因究明というよりもそこに生きた人間たちのドラマが中心。最高責任者の船長エドワード・スミス、船のオーナーであるイスメイ、タイタニック号の設計士アンドリュース、そして航海士、通信士、機関士、客室係などのスタッフ、乗客も様々な階級からそれぞれの思いを抱えて乗船しており、世界最先端のレジャーを楽しむ一等客から渡米して新天地で夢を叶えたい三等客まで。

普通顔の見えない「その他大勢」はアンサンブルが演じるじゃないですか。この作品ではスミス船長、イスメイ、アンドリュースを除いて全員が早着替えを駆使して代わる代わる色んな人物に変身するんですね。それがとてもユニークで気に入りました。そういうのもあって役の軽重に関わらず全ての人間が平等に扱われている印象を持ったんだけど、それは群像劇だからという理由だけでなくトム・サザーランド演出の特徴なんだと思う。「パジャマゲーム」の時も一人一人のキャラが立ってて群像劇のような印象すら受けたし。しかし「タイタニック」の時代は階級差が今より大きくて、しかも生死を分けたのも階級が関係してくるから尚更タチが悪い。「人間なんて皆同じ」というフィルターを通して一等客の生存率と三等客の生存率の差を見比べるとその残酷さが一層際立つんです。三等客なんてドアを締められた上に救命ボートまでも一番遠かったわけだし。その一方でタイタニック号の事故は助からなかった人の方が多いのは周知の通り。一等客でも亡くなった人多数だし、実は一番助からなかったのは二等客の男性という事実を知ると「死ぬ時は皆同じ」という事実もまた照らし出される。本当にやり切れないです。

1幕はタイタニック出航から氷山衝突まで。この間にフラグがどんどん立てられていく訳です。イスメイが最短時間で航海することにこだわり「どんどん速度を上げろ!」とけしかけ、船長もうぜーなと思いつつ従ってしまう。他の船から氷山の報告を何度も受けながら無視する。あーもう何やってんだよ!!ですよこっちは。他にも船長が「これを最後に引退して隠居する」と言ったり駆け落ちカップルが「アメリカに着いたら結婚しよう」と言ったり三等客の貧しい娘達が「アメリカに行けばいい職にありつける」と言ったりフラグ立てまくり。こちらは結末知ってるだけに彼らの晴れがましい顔を見ているだけでどんどん不安になります。そんな中一服の清涼剤的効果を果たすのが二等客のビーン夫妻。地に足の付いた夫エドガーとセレブの社交の輪に何とかして入り込みたいミーハーな妻アリス。2人のやり取りがユーモラスでほっとしました。エドガーがパジャマゲームでもお馴染みの栗原さんで、悲劇だから渋くてシリアスなイケオジかなと思ったら、妻に振り回されるちょっとハインジー入った役でした。アリスは初めて生で拝見する霧矢大夢さんだったんですが、私彼女のパーシーが品良くてお気に入りなんですよ。アリスも綺麗なのにキュートでよかったです。カテコまで夫婦を演じていたのが面白かった!あと、これもパジャマ組なんですが、プレッツだった上口さんどこ?とずっと探してたんですがかなり後で内気で真面目な通信士だったのかと気付いて振り幅の大きさにびっくり。機関士バレットとのやり取りよかったなー、劇中で唯一クスッと笑えたシーン。パジャマついでにぶっちゃけると、威張りんぼ社長の佐山さんは誇り高い紳士の役だったし、木内さんはバンドマスター(劇中にはなかったけどタイタニックのバンマスのエピソード有名ですよね)だったし、みんなパジャマゲームより魂が清らかになってるw!パジャマがおかしいだけだよね、うん知ってたw

これいつまで続くのかなと正直思ってた所もありました1幕までは。氷山にぶつかるところで休憩に入るんだけど、分かってはいてもその瞬間が本当に怖くて。それだけ見入っていたということにその時気付きました。それから2幕は怒涛の展開。このために1幕があったのかと納得。人間の傲慢さ愚かさ醜さ素晴らしさ勇敢さ逞しさ気高さ儚さ色んなものがぎゅっと詰まっていてもう言葉にならない。ここはどんなエピソードに涙腺を刺激されるか人によって違うので詳細な解説は省くけど、私は側にいるのが当たり前になってるような夫婦が突然別離を迎えるというシチュエーションに弱いみたい。だからビーン夫妻が印象的だったのかな。こういうのにシンパシーを抱くとは私も年をとったものだ…あと子役いなくてよかったね!いたらもうヤバいなんてもんじゃなかったと思う。

なんて事を言っていますが実際に観ている時は恐怖心が先に立って泣いてる暇なかったです。船長とアンドリュースとイスメイが責任のなすり付け合いをする場面や、アンドリュースが設計をもっとこうしとけばよかったと半狂乱になる場面、大した説明もなくただ救命胴衣を着けろと言われて一等客が嫌だとゴネたら急に電気が止まり事の重大さを悟った場面などなど本当にぞっとした。きっと乗客の1人になったつもりで観ていたのだと思う。

セットはシンプルで舞台奥にバルコニーがあって可動式の階段があるだけ。それが客室になったり食堂になったり操舵室になったりありとあらゆるものに変化する。上段と下段は明確に区別されていて階級の違いだったり、生者と死者を隔てる壁にもなっている。特に最後の方、生者が上段、死者が下段にいるんだけど生き延びたはずのイスメイが下段にいたのは印象的だった。彼はこの後船舶運航の安全性の向上に寄与したってパンフに書いてあったけど、そうでもしなければ生きる場所を与えられなかったんだろうな。

私がこれだけのめりこめたのも皆さん上手で散らかった印象なくきっちりまとまっていたからですよ!「パジャマゲーム」の時もそうだったけど、トム氏の舞台はうまい人ばかり集めてるんだなということがよく分かった。他の舞台では個人はうまくても小さくまとまってしまったなーというのもあるんだけど、これはそういう風には感じなかった。舞台から飛び出して来るようなスケールの大きさを感じた。一体何が違うんだろう?

そんなこんなでとってもいい作品!なんだけど、やはりエネルギーをかなり消費します。しかし手元にはもう一枚チケットがあるのだ!いや観たいよ!でものめり込み過ぎてしまうみたい、タイタニック号のwikiまで読みふけってしまったし。ヒストリーチャンネルの「メーデー」(飛行機事故の原因究明をするドキュメンタリー番組)すら苦手なガラスハートの持ち主なんです私は(自分で言うなよ)。これは好みの問題に過ぎないけど頭空っぽで楽しめる作品の方が自分には合ってるみたい。そう、パジャマゲームのような。という訳でアンケートに「再演早よ!」としっかり書いてきましたよ。大きな任務を遂行した気分になった、いや再演決まってないけどw 2回目も書いてきますね!もちろん「タイタニック」も楽しんできます。多分見落とした部分があると思うのでしっかりと見てきます。

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