「タイタニック」感想続き&うんちく語り

「タイタニック」2回目観てきました!行く前は「また重苦しい気持ちにならないかなあ…」と不安な気持ちが無きにしも非ずでしたが、2回目は心の準備ができて多少余裕があったので希望と絶望が交錯する人間ドラマの行方に集中できました。観た後の気持ちが前回よりふわっと軽くなりようやく「こういう作品だったのかな」と飲み込めた様子。2回観てよかったです。

今回は少し大局的に物が見られたので、タイタニック号という当時の最新技術で作った可動式の建造物を通して、人類の飽くなき挑戦や野望や憧れや夢と言ったものに思いを馳せました。その一方で更なる高みに手を伸ばそうとして足元から崩れ去るというバベルの塔やイカロスの翼にも通じる寓話性みたいなのも感じて、そういった所もタイタニックが人々を惹きつける所以なのかなと想像しました。今の基準からすれば安全性のガバガバさに驚愕するばかりだからね。救命ボートが足りてなかったのは有名な話だけど、当時は人数分のボートを載せる義務はなかったらしい。他にも氷山があるという他の船からの警告もわざわざ上に知らせる義務はなかったんだって。それであんな馬鹿でかい船を海上に浮かべたというのだから驚きですよ!

ただそれは私が「神の視点」から眺めてるから言える事であって、当時の人間ならば何ら不思議には思わなかったであろうことは想像に難くない。この事故をきっかけに船舶の安全基準が飛躍的に向上したらしいけど、タイタニック号が沈没してない世界線でも第2、第3のタイタニック号が存在して、ひどい失敗をしなければ人間は学ばないのは変わらないんじゃないかなと思う。

冒頭は、事故後イスメイが(おそらく事故調査委員会で)生き残った人々が冷たく見下ろす中タイタニックへ馳せた思いを悔恨を込めて歌うシーンなんだけど、ここ本当はアンドリュースが希望を持って歌うシーンだったらしいんですね。同じ歌でも歌う人やシチュエーションが違うと全く違って聞こえる。それからガラッと雰囲気が変わって人々が期待に胸を膨らませて乗船するシーンへ。この20分弱の冒頭のシーンが本当に晴れがましくて胸が一杯になるんですよ。タイタニックへ人々が乗せた思いがよく伝わるんです。技術革新への挑戦だったり絢爛豪華な旅行のワクワク感だったり移住先での豊かな生活の夢だったり。このシーンが作品の肝と言ってもいいかもしれない。コーラスの圧もすごかった!しかし同じ歌がラストにも歌われるんだけど、その時は同じ気持ちでは聴けません。職務に忠実に従い殉職した人間の矜持、愛する者を守って亡くなった人間への鎮魂、生き残った者の悔恨の念などなど様々な感情が湧いてぐちゃぐちゃになります。何にも言えねえ。

そんなこんなでいつものようにまとまらない感想なんですが、史実の人々は事故後どんな転機を辿ったのだろうと思いパンフ見たんですが何も書いてないんですね。こーゆーの公式が教えてよ!と思ったのですが仕方ないので自分でwiki見て調べました。せっかくなんで以下簡単に紹介しようと思います。英語のスキルはないので間違ったところあったら教えてね。

エドワード・スミス船長

ほぼ劇中通り。彼の出した「女性と子供優先」と言うのは当時一般的ではなかったらしい。統計上ではクルーの生存率が一番高いのが普通らしく乗客の生存率が高いのは珍しかったとのこと。従業員がさっさと逃げるのが普通だった時代…

トーマス・アンドリュース(タイタニック号の設計士)

実際の彼の写真を見るとキリッとした凛々しい顔立ちで加藤さんが彼を演じたの分かる。wikiには妻と生まれたばかりの娘と写ってる写真もあって精神的にキツい…海に落ちても掴まれるようにデッキチェアを海に放り投げたり勇敢に乗客の救助を手伝ったりして死後も英雄視された。

ブルース・イスメイ(タイタニック号のオーナー)

こちらもほぼ同じ。「アンドリュースが救命ボートの数が足りない事を主張したがイスメイは突っぱねた」っておい…事故後「なんでお前が生きてるんだ」と相当突き上げを食らったらしい。そりゃあなあ。ホワイトスターライン社の社長を辞職したのも当然か。パンフにある事故後船舶の安全向上に努めたというのは英語のwikiに書いてありました。1937年74才で糖尿病の合併症により死亡。

ウィリアム・マードック一等航海士

船長は「女子供優先」と指示を出し、マードックとライトーラーがそれぞれ右舷と左舷から避難誘導をした。マードックは柔軟に男性も救命ボートに乗せていた。最期について日本語のwikiには溺死と書かれているけど劇中では拳銃自殺したので「はて?」と思い英語wikiに飛んだら色んな証言があるらしい。どっちにしろ遺体が見つかっていないので確認しようがない。映画「タイタニック」では乗客撃ち殺して自分も死ぬなんて改変されて遺族が激おこしたって。そりゃ怒るわ。

チャールズ・ライトーラー二等航海士

生き残った従業員の中で最高位。こちらは「女子供優先」を律儀過ぎるほど守って男性は乗せなかったらしい…こんな所で男性乗客の生死の分かれ目が…傾いた船から一旦海中に放り出されたが転覆したボートに乗りバランスを保って生還。すげー。その後も第一次・二次世界大戦でも海軍に従軍して戦火を生き延びた。すごすぎる。普通あんな思いしたら2度と船に乗りたくないよね?1952年78才で心臓病により死亡。

ハロルド・ブライド通信士

もう1人の通信士フィリップスと共に電気が切れる寸前まで救難信号を出し続けた。電気が切れてからフィリップスと共に逃げ彼だけ助かった。ニューヨークタイムズ紙に体験談を載せて千ドル貰ったがその後は表に出ることはなかった。婚約者がいたが事故後婚約解消し別の女性と結婚、第一次世界大戦でも通信士として従軍し船には乗っていた模様。1956年66才で肺がんのため死亡。

フレドリック・フリート見張り係

衝突時に見張りをしていて調査委員会で「双眼鏡があれば事故を防げた」と証言(出航直前に人事異動があり引き継ぎがうまくできなかったために双眼鏡の所在が不明に。そのため肉眼で見張りしなければならなかったらしい!)。そのためか死後墓に「遅くなってごめんね!でもないよりはマシでしょ!」の手紙と共に双眼鏡が置かれたって…イギリス人のジョークってなんでいつもギリギリアウトなんだ?事故後も船員としてしばらく働いていたが晩年は貧しかった。妻の兄の家に暮らしていたが妻の死後家を追い出され77才で自殺…貴重な生還者だったのに…

ウォレス・ハートリー(バンドマスター)

wikiには「婚約者がいたがタイタニック号がもたらしてくれるはずの将来の仕事を夢見て…」と書いてあって、やめてよこういうの!辛すぎるよ!!最後の最後まで皆を励ますために明るい音楽を演奏し続けたというのは有名な話。劇中で歌われる「秋」というのも実際に奏でられたそう。彼の遺体にはバイオリンがくくりつけられてあって、そのバイオリンが2013年になって発見されたらしい!感動的なエピソードてんこ盛りで彼主役でスピンオフ作品作れそうだな!

フレドリック・バレット機関士

劇中では亡くなってしまう彼ですが史実では生きてたんやないかーい。恋人を遺して死んだ機関士はいなかったんだよかった。事故のわずか数週間後タイタニック号の姉妹船オリンピア号で働いていた。タフすぎる。1931年48才で結核により死亡。

イシドール・ストラウス/アイダ・ストラウス(一等客)

こんな美しく悲しすぎる話が史実だなんて信じられん…アイダは自分のメイドをボートに乗せ毛皮のコートを与えたんだって…夫の遺体は見つかったが妻のは見つからなかったらしい。

エドガー・ビーン/アリス・ビーン(二等客)

この2人は実在の人物ではないけどエドワード・ビーン/エセル・ビーンという人がモデルらしい。なんと!エドワード・ビーンさんは二等客では珍しい生還者!お前も生きてたんやないかーい。彼はレンガ職人で妻と共にニューヨークに移住しようとタイタニック号に乗船。事故後はニューヨークで暮らし2人の子を設け、エドワードは1948年69才で、エセルは1983年93才で亡くなった。

チャールズ・クラーク/キャロライン・ネビル(二等客)

2人とも創作上のキャラ。しかしキャロラインの方はエイダ・マリア・クラークという人がモデルらしい。この人は別に上流階級出身ではなく駆け落ちもしていない。中流階級で両親は普通の労働者、夫も同じ階級で子供はいなかった。夫婦で二等客として乗船し妻のみ生還。1953年69才で亡くなるまで再婚せず、彼女の墓には夫も埋葬された。

客室係のエッチスやベルボーイ、三等客は架空の人物らしいが、似た境遇の人はいたはずだと思う。それにしても、調べてみて痛感したけど昔の人ってタフですね。普通あんな事故に遭遇したら怖くて二度と船に乗りたくならないと思う。それなのに船の仕事続けたり戦争に行ったりしてるもんね。今ほど仕事のつぶしが効かなかったというのもあるのかも。夫に死なれた女性も階級に関わらず殆どが再婚している。養ってもらわなければ生きていけない時代というのもあったんでないかな多分。後、おそらく今で言うPTSDになった人も多いと思うんだけど事故直後から容赦無くマスコミの餌食になっている。高額の報酬を得た人もいるらしいけどその負担も半端じゃなかっただろう。もっともタイタニック事故の後に起こる第一次世界大戦で戦争神経症というのが有名になったくらいだからこの頃はまだPTSDの概念もなかったんだけど。このケースに限った事ではないけど、昔の人の考え方や行動パターンを見るにつけ「人権 is 何?」って思う事多いですね。当時の人々の方が厳しい環境の中にいてギリギリの選択を迫られていたということがよく分かります。今の我々の生活が彼らの生きてきた証の上に成り立ってるのですね、って柄になくいいこと言ったつもりになったところで、「パジャマゲーム再演早よ」!今回もまたアンケートに書いてきたよ!終演後だと頭がホワンホワンしてうまく働かないので開演前にしたためた私に死角はなかったぜ!それではまた!

“「タイタニック」感想続き&うんちく語り” への2件の返信

  1. 雑食さん、こんにちは。悲劇は苦手なのでタイタニックは絶対観ないけれど、こちらの記事はとても面白く読めました。「神の視点」これ私もよくハッとさせられます。そして「人権is何?」ホントその通りです。「パジャマゲーム」に通ったのは昨年の9月~10月で、もう1年が過ぎたなんて。あんなに質の高い、笑えて皮肉が効いてて差別や偏見にモヤモヤすることもなく誰でも楽しめるけど実はオトナの作品、っていう舞台は貴重でした。再演かなって欲しいです。

    1. いつもコメントありがとうございます!
      祖父母世代の話を聞く機会があったのですが、今よりも病気や事故で簡単に人が死ぬ時代で幸福追求できる余裕もなかったんだなという感想を持ちました。今回タイタニック周りのことを調べて、当時日本よりも進んでいたイギリスでもその辺あまり変わらないということが分かりました。
      1年前に観た「パジャマゲーム」以来他の舞台も観たくなって暇を見て通うようになりましたが、あれを超える作品には出会えてません。楽しくてワクワクしてすごく幸せになって劇中歌を口ずさみながら帰路に着いたあの日々は特別だったんだなと日を追うごとに思います。再演して欲しいと切実に願ってます。

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