「フォリーズ」感想

前から気になってたナショナルシアターライブ(ロンドンのナショナルシアターでやってる舞台作品を日本の映画館で見られるありがたい企画)。「オラ田舎者だから頻繁に東京さ行げねえだ…」(何だかんだで理由つけて観劇には行ってるくせに)と見たい作品があっても我慢してたんですがタイトルだけは聞きかじっていたミュージカル「フォリーズ」(原題 Follies)の上映があるというので無理くり時間空けてギリギリ最終日に行ってきました。てな訳でいざTOHOシネマズ 日本橋へ!

follyとは「愚か、馬鹿馬鹿しいこと」の他に複数形でグラマーな女性が出演するレビューという意味もあるそう。表向きは後者の意味ながら見ていくうちに前者の意味合いが大きくなってくることに段々と気付きます。時は初演時と同じ1971年。2つの世界大戦の間に栄えたブロードウェイの劇場「フォリーズ」が取り壊されることになり、元オーナーを筆頭にかつてのショーダンサー達が寂れた劇場に集まって同窓会を開くことに。その中にサリーとバディ、フィリスとベンという2つのカップルがあった。サリーとフィリスは元ショーダンサーでルームメイト同士でもあった。バディとベンは学友で2人でよくフォリーズの舞台を見ていた。若い頃は4人であちこち遊びに行っていたが、サリーとフィリスはベンを愛するようになる。結局ベンはフィリスを選んだが結婚後仲は冷え切っていた。一方のサリーもバディと結婚したがこちらも仲はいいとは言えなかった。そんな彼らが一堂に会したことで止まっていた時間が動きだす。政治家として社会的成功を収めても愛に飢え常に空虚感を抱えるベンと、結婚後もずっと彼が忘れられなかったサリーが再接近し、フィリスとバディはそれぞれ愛人がいた過去を告白しつつも内心やり直したいと思っていたが…

まっさらの状態で見たので4人の関係を把握するまでちと大変でした。ちょっと予習をすればよかったかも。それと並行して歴代のショーダンサー達がメインのドラマの合間にそれぞれの持ち歌を披露するのだけど、往年の彼女達の活躍を彷彿とさせると同時に、その後の決して一筋縄ではなかった生き様も反映されてるように感じて面白かった。今では太っちょになった元ダンサー達が生き生きと踊るのが楽しくて。この作品の構造として若かりし彼等も舞台上に同時に存在するんだけど、ダンサー達が若い頃の自分達と一緒に踊るナンバーが個人的なお気に入りでした。

この「若い彼等」は前半ではただ「現在の彼等」を見つめるだけなんだけど、段々と前面に出てくるようになる。若い彼等も口論に交じって計8人が罵り合い、サリーとバディ、フィリスとベンのカップルの亀裂が決定的になった時、いきなり舞台がパステルカラーに染まって「LOVE LAND」というレビューが始まる。若い2組のカップルの希望に満ちたスタートから始まり、それぞれの愚かさというテーマで各自が歌い踊る。そのカオスに包まれるうちに何だかんだで元の鞘に戻るという話。最後が力技なのがミュージカルの醍醐味って感じw

でも圧倒的なエネルギーに押し切られてしまうほど力がある舞台なのですよ。とにかく歌もダンスも演技もすごくて生で見たら「はえ~」と変な声出たと思う。1971年現在の彼等は50~60代で役者もシニア世代の人たちなんだけどガンガン踊って歌う。普通の作品だと主人公の親とか脇に回ることが多いであろう彼等がメインを張り真正面から恋をしたり葛藤したり自己主張する姿は勇気をもらえる。登場人物が善人でも悪人でもない俗っぽさがあって性的な執着も垣間見られたから、もっと若い頃見たならむしろ嫌悪感すら抱いたかもしれないくらい生々しさがあったけど、今では少なくとも理解はできるしもっと年取れば共感もできるようになるかも。

個人的にはサリーの存在が印象的で劇中では「可愛らしいタイプ」と言われているけど、敢えて語弊のある表現をすれば「地頭が余りよくなさそう」なタイプw でもそれが異性には受けたんだろうしフィリス(対してクールなタイプと言われている)はサリーのそういう所イラついてたのかなあというのも容易に察せられる。年甲斐もなくキャピキャピした少女の気持ちなのが痛いんだけど、思い込んだら迷わず行動に移すエネルギーになぜか目が離せない。サリー役の女優さんうまいなあと思ってたらハリポタのアンブリッジ先生なんですね!道理でどこかで見たことあると思った。

欠点としては休憩なしの155分という構成が疲れる!尻が痛くなっただけでなく「これいつまで続くの?」と集中が途切れそうになったところがあった。気分を切り替えるためにも休憩はあった方がいいと思う。あと前にも書いた通り最後展開が強引かなあ?結局何で元通りになったの?という疑問は残る。日本でこれやるとしたら宝塚OGかなと考えたけど、シニア俳優メインという時点でチケット売れないか。あるいはテレビで有名な人連れて来るとか。ベン&バディは鹿賀丈史と市村正親かなw?ソンドハイムの音楽いいけどそれ程キャッチーという訳じゃないし…とつい興行者目線で考えてしまうw 私が興行者だったら絶対客入り悪くて潰れる自信あるのにw そう考えるとこういう作品も人気を得られるあちらのミュージカル文化はすごいなあと思うわけです。

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