スカーレットピンパーネル(紅はこべミュージカル版)感想

小説、ドラマとくればミュージカルにも触れないと。日本では宝塚を通して紅はこべを知ったという人も多いのかな。私はと言うと、そんなに語れるほど舞台を観ていない。ブロードウェイ版はもちろん未見だし(サントラCDは何度も聴き込んだけど)、宝塚の舞台も直接観ていない(月組のはなぜか映画館でやっていたのを観た)、先日やっていた梅田芸術劇場主催の舞台は2回行った。今度の宝塚の再演は予定してない。あとはYouTubeに転がっている世界各国で上演された動画を漁るくらい。

こんなんで語っていいのなーでも全く観てない訳ではないし別にいいよね。ミュージカル版は原題の「スカーレットピンパーネル」というタイトルか。あの小説の紅はこべと気付いてない人いそう。紅はこべって響きいいのになあ。

ブロードウェイ上演当時批評家の評価は芳しくなかったらしいけどそんなことないよね。名作とまでは言えなくても佳作くらい言ってもいいんでない?と個人的には思う。現に今でも定期的に世界のどこかで上演されている。だって音楽がいいもの。フランク・ワイルドホーンの作った楽曲はどれもキャッチーで聴いてて高揚感が湧いてくる。

宝塚版では話が少し変わっていてルイ16世の息子である王太子を救う話になっている。これはオリジナル改変ではなくて、原作第4巻の「エルドラド」を踏襲している。因みに1982年ドラマ版も王太子救出の話が出てくる。これに伴って宝塚版では「ひとかけらの勇気」という曲が追加された。最初に聴いた時はパーシーにしてはおセンチすぎるなあと思っていたのだが、最近「エルドラド」を読んで考えが変わった。きっとあのシーンを想定して作られた曲なのかな(詳細はエルドラド評の時に)。

私が最近観た梅田芸術劇場主催の舞台(こちらは普通に男女キャスト、主要キャラ3人に実力者を置き周りに人気の若手イケメン俳優を配した辺りやりおるなと思った)ではロベスピエールのソロが追加になったけれど、話のバランスが崩れてしまわないかな?と思ってしまった。彼なりの正義を歌った曲なんだけど、この世界観ではフランス革命は悪なのに(この辺原作者のバロネス・オルツィがハンガリーの亡命貴族で革命に批判的なスタンスだったのが影響しているらしい)、ただでさえフランス革命を肯定的に捉えている観客が多いであろうことを考えるとどちらが善で悪なのかが分かりにくくなるのでは?と思った。歌がとても上手くて説得力があったから尚更ね。

それを言うなら、楽曲全体を見回すとショーヴランの曲の方がセクシーで思いがこもってるもの多いんだよな。「where’s the girl?」とか「falcon in the dive」とか。だからパーシーとショーヴランの役者のバランスが少しでも違うと「あれ?ショーヴランの方がよくね?」って思ってしまう。現にドイツ版ではショーヴランの方が優っていたし(ドイツ版ショーヴランを演じたChris Murrayの動画は必見です)。だから「ひとかけらの勇気」をパーシーに追加してバランス持たせたのかなとまで考えてしまう。あとパーシーってやはり演じるの難しい。サントラCDとYouTube動画で場面の一部を見た限りでは、ブロードウェイ版のパーシーは「アメリカンヒーロー」に見えてしまうのよね、歌はすごくいいんだけど。こないだの日本の舞台では石丸幹二がパーシー役だったけど、彼のノーブルなキャラにぴたっとはまってよかったけどやはりイギリス貴族とはちと違う。あの独特の慇懃無礼さってなかなか真似しにくいと思う。それを考えるとアンソニー・アンドリュースはしゅごい…

wikiを見ると「内容は大きく変えてある」とあるけど、個人的には大筋では変えてる印象ない。挙げるとすればマルグリートとショーヴランの関係とアルマンが弟になっているというところかな。しかしアルマンが弟というのも実はオリジナルではないのだ。何と1巻では妹の身を案じる頼れる兄だったアルマンが続編では弟になっているのだ!って余りにもひどすぎるよオルツィさん!これも別記事で触れると思うけど…

あっ思い出した、原作と違うと感じたところ。小さな事だけど捕えられたアルマンが普通の拷問受けてるところは違和感があった。ショーヴランはそんな野蛮と言うかストレートなやり方はしない。実在のモデルが貴族出身だったというのも影響してるかもだけど、続編では仲間の野蛮なやり方にドン引きしている描写もあるくらいだから。だからと言って穏便という訳ではなく、ネチネチした精神攻撃やじわじわと確実に追い詰める方法を取っていてこれはこれで残酷なんだけどね(と同時にパーシーが付け入る隙を与えているとも言える)。

改めて読み返すと注文が多いけれどミュージカル版好きですよ。でなければ2回も観に行きません。やはりミュージカルは楽曲が命だと思う。ストーリーは正直突っ込み所あるんだけど(これは原作もだからしゃーない)楽曲がよければそのパワーで押し切れるところが強みだと思う。今度やる宝塚版も興味あったけどなかなか舞台観に行くの難しい環境で…こないだも強引にねじこんでやっと実現できた程だし。お金と時間と労力を考えると観劇って難しい趣味だよねって思う。

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