「ふたり阿国」感想

こんにちは。「ふたり阿国」観てきました。東京はちょうど桜が満開で人形町駅から明治座へ行く途中花見をしながら歩いてました。館内に入っても噂通り売店が充実していてあの店この店から試食攻撃を受けてどれもおいしいもんだから財布の紐がつい緩みがちになるし。観劇する時はコンビニおにぎりで済ますことが多い私には刺激が強かったですw それでは感想行きま〜す。

私としては12月の「海の上のピアニスト」以来の北翔さん。とにかく幕開けの存在感と圧倒的な歌にやられて思わず泣きそうになりました。いや大袈裟に言ってるのではないですよ。普段は涙腺カラッカラで別に悲劇観ても泣くことって余りないんですが、心をぐわっと鷲掴みされるとそれが楽しいものであったとしても、感動して泣きたくなるんです。この時は正にその状態で、何だかんだ言っても目が離せない追いかけて行きたいなあとしみじみと感じました。出て来るだけできゅっと舞台全体が引き締まるんですよね。贔屓だからというのもあるけどついつい目で追ってしまう。やはり大きな舞台が似合う。舞台の上で一人立っていても空気を制する力があるんです。個人的に一番のお気に入りはゴスペル歌うところ。うまいってもんじゃない、圧がすごくて語彙力失う。拍手する時ヒューって声だしちゃいましたもん。和物でゴスペル?と思うでしょ。そう、他にはアイドル歌謡やラップやブルースも出てきます。和物だと思ってたら現代の芸能を取り入れていてかなり意欲的な作品でした。それまで貴族や武家のためにあった芸能が庶民の生活に下りてきた安土桃山時代と、外国から取り入れたものも日本流にアレンジして多様なジャンルが日々生まれる現代を重ね合わせたのかもしれません。ただの歴史絵巻にせず現代に阿国の物語を立体的に蘇らせようとする野心を感じました。

出演者の方も色んな分野から出ていて蘭の時もそうだったけどあの時以上に異種格闘技って感じでした。宝塚でしょ、AKBでしょ、2.5にK-popに四季にテレビで活躍する人に…特に坂元健児さんすごかった。北翔さんと並んで飛び抜けていたもんな。飄々とした芸人の役だったけどもっと観ていたくなった。あと本格的な殺陣もあってとにかく何でも詰めこむ欲張りぶり。恐怖時代でもご一緒だった市瀬さんの殺陣がたっぷり見られて大満足。一幕しか出てこないのかと思ったら二幕も出てきてくれて心の中でガッツポーズをしました。峯岸さんもあどけなくて可愛かった、あの透明感がアイドルなんだなと思った。猪熊少将の玉城さんもよかった、というか猪熊少将の事件事前に調べといたのであんないい人に扱われるとは思わなかった。コングさんは悪どい役なんだけどなぜか憎めなさもあって不思議な魅力、ブンバボーンで毎日お世話になってるのでそれなりに思い入れあったw(そう言えば4月から体操のおにいさんが交代になったのに伴ってブンバボーンも変わってしまったのが残念、って本題に関係ないやん!)。阿国一座に背の高い美丈夫がいると思ったら鳳翔大さんだった。美人なのに立ち姿だけで凛々しくて男役の佇まいでかっこええなあと思いました。

ただ…誠に言いにくいですが私はこの舞台べた褒めではないのです…確かに北翔さんの魅力が十二分に発揮されてる、階段状になった大きな太鼓橋がぐるぐる回って場面が展開される舞台セットも良かった。様々な分野のスペシャリストが集まってそれぞれの持ち味を発揮している、それを纏める役割が北翔さんというのもいい。でも、でも!内容がイマイチ分からない!特に二幕!一幕はまだいいんですよ。お丹が阿国に憧れて全てを失って修羅と化すまでの話は分かるんです。二幕の始めで猪熊少将が阿国に「山三郎が死んだらしいぞ」と言われて阿国がショック受けるじゃないですか。さ、さんさぶろう!?誰だそれは?となってしまって。阿国の夫は三九郎でしたっけ。でも夫婦だからずっと一緒にいるわけだし死んだらすぐに分かりますよね。コングさんも三が名前に付いてなかったっけ?でもあの人が死んだところで阿国が悲しむはずもないし…うーん…と考えてしまいました。家帰って調べたら戦国時代に名古屋山三郎という武将がいて、出雲の阿国との間にロマンスがあったという説があったんだって。しーらーなかったー!!それ基礎教養なのか?私が出雲の阿国について知っている全ては歴史の教科書で1行も満たない「歌舞伎踊りを始めて人気を博し、歌舞伎の始祖と言われる」という記述のみ。それだけじゃダメだったのか!その後捕まると分かってて面を着けるじゃないですか。WHY???山三郎の死がショックだったからわざと捕まったの?そこまでの重要人物なら劇中に登場させようよ!それで殺陣のシーンですよね。おおおカッコいい。少将の家来の左門さんうまいなあと思ったら大衆演劇出身なんですね流石。お、市瀬さんまた出てきてくれたラッキー。でもなぜここで争いになってるの?ああ阿国を助けに来たのか。でもいくら何でも死罪ということはないだろうしせいぜい江戸を追い出されるくらいじゃね?そこまでリスク負う必要ある?現にみんな斬られちゃったじゃん!阿国の行動軽はずみじゃね?それより歌舞伎踊りの場面よく覚えてない!前身のややこ踊り(これって若いおにゃのこがわざと小さい着物着て踊ってチラ見せしていやーん!エッチ!というものだったらしい…)は一幕でよく出てきたけど歌舞伎踊りのインパクトが少ないというか、でも阿国と言えば歌舞伎踊りだよね?そこでもっとドドーンと見せて欲しかったなあ。最後お丹と再会して「幕は引くまい」荘厳な音楽と共に終わりましたが正直ポカーンだったのですよ。

1回しか観てないから私が色々見落としただけかもしれない、この後もう一回観るからそれまで感想挙げるのやめようかな…と思いました。でも私のようなアフォも観劇に来るんだから1回だけで理解できるように作ってくれなきゃフェアじゃないじゃんと言うのが本音です。演出や衣装や音楽のセンスは蘭より断然好みなんですが内容が飲み込めないというのは自分の中で致命的でありまして…否定的なこと言いたくないから明治座の土産物話でお茶を濁そうかと思ったのですがw 自分のブログだし結局開き直って言いたい放題書いちゃいましたw あと蛇足ですが「これ10年後でもやれそうな役だな」とも思っちゃったんですよね。若い時は限りがあるのだから今しかやれない役をやって欲しいなあ…といいパフォーマンスを見た後にも関わらず贅沢な事を考えていました。でも2回目見たら感想も変わるかもしれないのでそしたらまた報告致します。

“「ふたり阿国」感想” への8件の返信

  1. 検索から参りました。

    名古屋山三郎については一幕の女院の宴の中で説明がありました。
    阿国が歌詞を変えて歌った直後です。
    「なごさんさまって?」
    「名古屋山三郎という傾奇者だ」
    から連なって、大層な美男で有名で彼のやった髪型やらなんやらが大いに流行ったという話題が出てくると思うので、ご注目ください。
    阿国との恋に関しては二幕冒頭のソロ曲の歌詞を聞けば察せると思います。
    何一つ手がかりがないわけではなく、提示はされています。
    フェアじゃない、というおっしゃりようが気にかかったので書かせていただきました。
    2回目の観劇が納得のいくものになるようお祈り申し上げます。

    1. コメントありがとうございます。
      ご指摘の二箇所教えてくださりありがとうございます。しかとチェックしようと思います。
      「名古屋山三郎」という名前自体初耳だったのでその会話もスルーしてました。
      観客の中で彼を知ってる人が半分もいたか疑わしいと個人的には思っています。
      その中で阿国の歌や彼についての会話で提示されていたからといって完全に理解するのはちょっと厳しいんじゃないかと思うんですよね。それ程重要な人物ならもっと丁寧に紹介すべきだった。
      ましてや大抵の人は1回きりの観劇でプログラムも買わないですし、家に帰ってから調べる人間なんて一部の物好きに限られるでしょう。エンターテイメントと謳うからには分かりやすさは第一に考えなければいけない、というつもりで「フェアじゃない」という表現を使いました。

  2. 天津乙女さんの阿国と春日野八千代さんの山三で覚えたアラ棺婆です。ロミジュリ並みにメジャーカップルだと思っていたのでちょっと悲しい。
    北翔さんは宝塚史上最も実力が軽視された時代に駄作と苦闘しながら育ったスターさんという印象です。私自身は他の方のファンでしたが同じ時代を耐えた者の副作用で説明不足の作品は自動的に脳内補完してしまう習慣があり今回も途中からは原作通りの再会をした2人の走馬灯と解釈。
    家族内でも今回は世代間格差が大きい。

    1. コメントありがとうございます。
      阿国と山三郎のロマンスってかつては有名な話だったのですね。忠臣蔵ですら年末に特番をやらなくなったそうで、世代を超えて共有される物語が少なくなっているのかもしれません。
      脚本に粗があっても演者の努力でそれなりのものにするのは宝塚も同じですね。だから海外ミュージカルの方が人気なのでしょう。オリジナル作品は当て書きが多いからハマれば最高なのですが。
      今回の阿国も北翔さんと重なる部分がありました。そこは意識して書かれたのだろうと思います。

  3. 説明されない設定が出てきて、混乱のままとなった観劇体験に同じ感想のかたはいないかな…と思って検索からたどりつきました。
    阿国の夫のところ、阿国のショックなど仰る通り、前提がわかっていなかったので唐突に感じてしまったひとりです。
    個人的には説明や前フリを納得するまえに、シーンがどんどん切り替わり、登場人物たちが所属を変え…という展開についていくのに必死でした。
    場面もどんどん変わるので、同じ装置を「いま、どことして捉えたらいいのか」謎なまま観てたシーンもあり、もったいないことしたなと思っています。

    1. コメントありがとうございます。
      三九郎が阿国の夫であること、私はたまたま事前に知っていたのですが、知らなかった!という感想を見かけて確かに分かりにくいかもと思いました。夫婦といっても阿国が誰と情を通じようが割り切っているドライな関係ですものね。
      演者のファンで観劇に来ている人はなるべくいい所を探そうとして、マイナス面にはなるべく触れようとしないという心理はあるかもしれません。私もこの記事挙げるの少し迷いましたしw 再演あるとしたらいくつか改善して欲しいところはあります。でもみんなに見せ場を作ろうと努力した形跡は伺えるし、あちらを立てればこちらが立たずでパーフェクトにするのは我々が思う以上に難しいのでしょうね。

  4. 遠出して2回観てきたのですが、??が残って不完全燃焼のまま残念な思いを抱えて帰りの途に着きました。zassyokuさんのブログを拝見し、同感です!の思いを強くしました。演者の皆さんのパフォーマンスは北翔さんを筆頭に素晴らしかったのですが、やはり1度で分かるということは商業演劇には必須であり、観客動員にも影響があるのではと思わずにいられません。
    山三との関係性は、私も後から調べました。公式ページを読むくらいでは分かりませんでしたので。また、自分の理解力不足かとも思うのですが、猪熊少将の死(これは前もって調べた)と、お国一座が殺されていくことは分かるのですが、他の座の人も死んでいくのは何故なんでしょう?皆同じ座になったんでしたっけ?それとも江戸時代が始まった当初は歌舞伎踊りが迫害された? その辺がどうにもついていけなくて、殺陣は素晴らしかったものの、最後の場面は感動に至りませんでした。知識もなく、理解力もない自分のせいであるとは重々分かっているのですが、おっしゃる通り、私のようなものが観ても分かるような作品であればストレートに感動し、誰もが満足できるのになあと。とてもいい舞台だったと思ってはいるんですけれど。

    1. コメントありがとうございます。あの後2回目を観に行って、楽近いこともあり演者のパフォーマンスの仕上がりがよくて前より満足する出来でした。観ている間はすごーい!前より分かりやすくなった!と感動したのに家に帰ってブログ記事を書こうと頭を整理したらあれ?ここはどうなったんだっけ?とまた混乱してしまい、どうやらその場のノリで分かった気になっていたようですw 確かにチケット売り上げにも影響しますよね、かくいう私もすごくよかったらリピチケ買えるくらいに時間と予算空けていたのですが…再演あればもう少し改善して欲しいなあと思います。音楽や演出など光るところはあっただけに。

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