グラナダホームズ感想 #27〜#32

ジェレミー・ブレット主演、英国グラナダTV製作ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」感想の続きです。結構この辺は昔NHKで放送していた頃に見ていたので覚えてるものが多かったです。

#27レディ・フランシスの失踪

これは昔見た時ラストシーンが強烈だったので覚えてました。原作も読んだはずなのに途中まで「これ何の話だっけ?」と分かりませんでした。原作と構成変わってるからですね。原作だと「お前ホントヘマばっかりな」とワトソンを貶しまくるホームズですがドラマだと「私たち全員が悪いんだ」とトーンダウンしています。それにしてもなぜラストを悲劇的に変えたのでしょう?原作だと「一回騙されたけどすんでの所で救出してめでたしめでたし」な雰囲気なのにドラマだとホームズが敗北宣言をしています。あんな体験して心理的ダメージを負わない訳がない(PTSDってやつか)という現代的解釈が働いたのかもしれませんがクロロホルムで意識朦朧としててどこまで現実認識ができたのかなあとも思ってしまう。ラストで珍しく反省しているホームズを優しく慰めるワトソンがツボでした。こんな優しいワトソンさんに「お前の捜査へったくそ!」とか確かに言えないよねw 前のワトソンさんもよかったんですが役者が変わるとホームズとの関係性が微妙に変化して見えるの面白いです。

#28ソア橋の謎

これ原作読んだ時もモヤモヤしたのですが、ドラマ見てもやっぱり同じでしたね容疑かけられた女性は可哀想だし嫌疑が晴れてよかったと思うけどイマイチ同情しきれないというか奥さん可哀想と思ってしまう。「プロポーズは断ったけど道徳的に矯正するために残る」って何じゃそれ。それで相手の行動が変わったとしても改心したからじゃなくて好きな女にほだされただけじゃんと思ってしまう。それに前の奥さんDVするような男じゃどうせ一緒になってもうまくいかないよと小姑アドバイスしたくなる。奥さんもかなり激しい人だけど使用人に慕われたんじゃいい人だったと思うんだけどね。それにしても、この回では初めて自動車が出てきたのが驚きでした。原作では後半になると文明の利器が色々出てくるのだけど、この話も原作だと最終巻の話なんで挿絵では女性の服装がコルセットぎちぎちじゃなくてゆったりしたラインのドレスになってるのが興味深いです。

#29ショスコム荘

ワトソンが焼夷軍人年金の半分を競馬に突っ込んでるエピソードが紹介されたのがこの話ですね。その割にはラストで20ギニーしか儲けられなかったことが判明しますが、自分たちが関わった事件の馬ならもっと賭けろよw とか思ってしまう。「銀星号事件」も競馬ネタだったけどこの時代は自然の荒野を走らせて競走馬を訓練するんですね。今みたいなトレセンはまだなかったんですかね。それよりそれより!この話には「ジャスパー」という犬が出てくるけど元の原作では名前がなかったんです。ジェレミーが主演した1978年の英国ドラマ「レベッカ」でジェレミー演じるマキシム・ド・ウィンターが飼っていた犬の名前がジャスパー、絶対これに因んで名付けられたと思う!!犬種も同じスパニエルだし!ジェレミーが提案したのかなと想像したらニマニマしてしまいましたw レベッカも好きだからこの2つの関連性を発見して嬉しくなった。レベッカのジェレミーもホント素敵だから見て!ソフト化はされてないけどつべにあるから見て!

#30ボスコム渓谷の惨劇

ホームズシリーズには「植民地や開拓地でやらかした過去の因縁によって起こされる悲劇」というパターンが少なくないけどこれもその一つ。ぱっと思いつくだけでも「オレンジの種5つ」「グロリア・スコット号事件」「孤独な自転車乗り」長編だと「緋色の研究」「4人の署名」もそうかも。最初は「同じプロットで設定だけ変えて量産してるのか」としか思わなかったけど、ホームズの時代の英国は世界中に植民地を持っててやりたい放題だったので、実際身近にありえそうな話だったんだろうと思う。「インド/アメリカ/オーストラリア/アフリカ帰りの◯◯さんあっちで相当ひどいことして財産作ったらしいわよ」みたいな噂話も当時ゴロゴロしてたんじゃなかろうか。それはさておき、陰惨な話なんだけどドラマに出て来るイングランドの夏の情景が清々しくてそれだけで爽やかな気持ちになれる。冒頭からワトソンが川に入って釣りをしてるし、2人が滞在したホテルも素敵だしちらっと出て来るイングリッシュガーデンも色とりどりの花が咲いていて綺麗。ホームズ達が話を聞きに行った農場で1日体験してみたい(観光農園じゃないつーのw)。これが冬に撮影していたらそれだけで重苦しくなっていたと思う。思い返すと秋〜冬にかけて撮った話はどこか陰鬱な雰囲気をたたえていたような感じがするのは気のせい?

 

#31高名な依頼人

冒頭から半裸の男がマッサージを受けるシーンでビビったw そうかこれは冒頭がトルコ風呂で始まるんだったっけ。トルコ風呂と言っても日本のアレじゃなくてサウナですw こんな所まで原作を忠実に再現するのすごいw この話は現代でもよくある「男にほだされて洗脳状態に陥った女の話」ですよね。ホームズとキティで説得に行ったがけんもほろろな対応されるのも「あーあるある」と既視感バリバリでした。キティが泣きながら過去に受けた被害の話をしている時にホームズが無表情のまま黙って肩を抱くのがいいんですよね。決して雄弁ではないけれど程よい距離感で相手を思いやるところが。初期の冷血推理マシーンではこういう態度取らなかったと思うので、時と共にホームズも角が取れてるんだなあ(そうなったのはワトソンのお陰かなあ)なんてことを考えましました。一つだけ不満なのは、グラナー男爵が女もイチコロなビジュアルじゃなかったこと。原作だと肌が浅黒くて女もこりゃ惚れるわとワトソンも認めるハンサムらしいけど、ドラマはちょっと年取りすぎてるし頭髪も薄かったし「何でこんなのに惚れたの?」と思ってしまった。英国俳優はカッコいい人揃ってるのに〜。

#32這う人

ええーっ!これやっちゃうの?トンチキNo.1のこの作品を!?いくら何でも原作そのままやるとかあり得ないだろドラマならではの改変があるだろと思いながらドキドキして見てました……最後までそのままやりやがった。ある意味すごい。スタッフの勇気に敬意を払いたくなります。なぜこれを選んだー!これより出来のいい作品まだあるじゃないかー!それともシャーロッキアンの中では一回りしてこよなく好かれてるのか?とにかくこのトンチキofトンチキな話を一流の役者が真面目に演じてるのがおかしいです。特に教授……ホームズというより「ジキルとハイド」に似た話ですね。教授の助手見覚えあると思ったらBBC版「高慢と偏見」のウィッカムじゃないかー!こんな所でお目にかかるとは。しかも名前がベネットなの偶然だとしても面白いw

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