「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」感想

そもそも「雑食」というハンドルネームは私の趣味嗜好の方向性が節操なさすぎることに因んで自嘲を込めて付けたのですが、このコロナ禍で観劇ができなくなったのでステイホームの中本を読むくらいしか娯楽がなく、今まで手をつけなかったなろう小説も読んでみました。現代のナウなヤングは何を読んでるのかしら?と興味あったし、この分野からアニメ化作品も多数生まれる一方で「なろうなんてw」と揶揄されるのも事実、それじゃ一体どんなものか自分の目で確かめてやろうじゃないかと。

こちらオナゴなのでやはり恋愛系に興味が向きがちなんですがその分野では数年前から「転生悪役令嬢もの」が特に流行ってるらしい。ここで知らない方に簡単に説明すると、前世で乙女ゲームをやりまくった主人公(重い病気にかかっていたり社畜OLであることが多い)が死んだ後、そのゲームに出てくるヒロインのライバル役に転生して、前世の知識を生かして逞しくサバイバルしたり、これから起こる運命を変えてバッドエンドを回避するというのがテンプレです。これが結構面白くてそれなりの数読み漁りました。枠組みは決まっているけど話の転がし方が作家ごとに違ってて懐が深いジャンルだなーと。それまでなろう原作の転生ものアニメ見てる夫に「余程現世でいいことなかったんですねpgr。来世に期待ですね〜」と意地悪くバカにしてたのができなくなったじゃん?ミイラ取りがミイラになる的なやつ?!このジャンルはとにかく人気で雨後の筍の如く余りに沢山出るので私もほんの一部しか読めてないと思うけど、その中で一番面白かったのが今回紹介する「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました(以下悪ラス)」です!

前置きが長くなったけどやっと本題。なろう小説と言うとぶっちゃけ玉石混交なんですが、これはかなりちゃんとした部類ではないかと思います。というか、もしただの流行りジャンルかと最初から敬遠する人がいるとしたら勿体ないほど、中身は正道のファンタジーです。1巻だけでもきれいに完結してるけど、続刊を読むとどんどん世界観が広がって面白くなります。長くなると展開がダレる作品も少なくない中、最後までテンションを保っていられるのもポイント高いです。

冒頭、新しい恋人(ゲームのヒロイン)ができたために許嫁の第二王子から婚約破棄を言い渡される場面で、この世界は前世の自分が遊んでいた乙女ゲームの世界、自分は転生者でそのゲームのヒロインと対立する悪役令嬢、アイリーンであるということに突然気付くところから物語が始まります。初めての方には突飛な設定に聞こえるでしょうが、これは悪役令嬢もののテンプレ。「遅刻遅刻〜!」って走ってたらトーストくわえた女の子とぶつかって学校着いたらその子は転校生だった的なアレです。この瞬間に彼女は近い将来自分はどのエンディングでも雑な死に方をしてしまうことに気付きます。自分が死ぬ直接的あるいは間接的な原因になっているのがラスボスである魔王、クロードの存在。彼は第一王子として生まれたものの魔王としての魔力も持っていたため廃嫡され寂れた古城にひっそりと住んでいます。ゲームではヒロインが魔王を倒すことになっていますが、アイリーンはそのどさくさに紛れて死んじゃうという訳です。そこで自分の死亡フラグを回避するために先に魔王を攻略しちゃおう!というラブコメディ。

とにかく主役のアイリーンが逞しくて凛々しくてカッコいい。自分が転生者だと気付いた瞬間に人格が転生前に戻る(乗っ取られる?)作品も少なくないけど、これに関しては引き継いだのは未来の知識だけなので言わば予知能力を開花させたようなものです。だから悪役令嬢と言われるけれど別に自分が特段悪いことをしたとは思ってないし可愛げのない性格のまま自分を信じてフラグを足で踏みにじり運命を変えていく様は正に猪突猛進。シリーズ後半になると文字通り剣を握って戦っているし。最早ヒーロー?魔王様がヒロイン枠になってしまってるw いやもちろんクロードも素敵なんですが。見目麗しいだけでなくアイリーンへの一途さやドSなところや力は強いのに姫ポジのところとか。溺愛と言ってもいいくらいにラブラブなのに次から次へと障害がふりかかって一筋縄ではいかず読者をハラハラドキドキさせるところにそう簡単にはくっつかせないぞという作者の意気込みを感じますw

もちろん他のキャラも魅力的、というか本書の大きな特徴はキャラの書き分けがとても巧みなところ。続編になるとアイリーンがクロードの部下(という名のアイリーンの下僕)をスカウトしてくるから登場人物が増えるけれどそれでも混乱せずに読める。キャラ立ちしてるからイメージしやすいんです。最初は好感度低いキャラも巻を重ねるごとに成長してみんな愛せるようになるから不思議です。特にこの先生の書く女性キャラはみんな素敵。1巻では小物の悪役だったゲームのヒロインも想像を超える成長?変貌?を遂げます。他の女の子たちもみんな逞しくてカッコよくて失敗しても挫折しても這い上がってくる姿がとても眩しく、同性として励まされます。

ところでこの手の小説をたくさん読んで気づいたんですが、昔は「身分の差なんて乗り越えてやる!」とか「政略結婚なんて御免だ!」みたいな大人や社会に反発して障害を克服するパターンが多かったけれど、今は「貴族同士の結婚に愛情がないのは当然」「親が決めた相手でもそれが貴族である自分の使命なのだから素直に従う」と周りと折り合いを付けながら自分の幸せを追求するパターンが多いんですね。私より少し前の世代は「社会の歯車になりたくない」とかなりイキってたけど今そんなこと言う若者いないよね?衣食住満足で趣味も満喫できれば別に歯車でもいいよという心境なのかしら(私自身もそっち寄りだったりする、若くないけどw)。そういう風潮とも関係してるのかなあ。どっちがいいかは置いといて、昔とは隔世の感があります。元々悪役令嬢を主役に据えること自体が逆張りですが、それがここまで受けるとは「例え誰かを傷つけても己を貫くことが善」という価値観が過去のものになりつつあるのかも、なんてことを考えちゃいました。

最後になるけどこの作品コミカライズされてるんです。その出来がこれまたよくて、コミカライズも成功してるんなら次はアニメ化じゃね?とついつい欲が出てしまう。アニメでも見てみたいなあと次々に夢が膨らみます。どこかでやってくれないかなあ(チラッチラッ)。そんな訳で普段ラノベ読まないよ!という人にもお勧めです。

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