いつの間にかシリーズ化したこの特集、何と5回目です!ブログに占める割合が大きくなってきたのでとうとう「さちみりほ」カテゴリー作っちゃいました。全部じゃないけどさちみ先生のハーレ作品はこれで結構網羅したかも。ハーレクインは全部ハッピーエンドなのでそこがいい!昔は悲劇の方が何となく深淵なイメージあったけどそんな単純な話じゃないと今なら分かります。一見単純な構造の中にいかに読者を飽きさせずエンターテイメントとしての質を上げるかという作家の工夫や苦心が感じられるのがいいんですよ!このストレス多いコロナ禍においてお供に置いて損はなし!です。
今回はシリーズものとクリスマスの作品でまとめてみました。基本1話完結なんだけど、先日紹介したブリジャートンのようにある一族の兄弟たちのロマンスや、そこから派生した脇役たちの恋模様を描いたスピンオフがあるパターンは多いのです。今回挙げるのはヒストリカルの「薔薇と宝冠」シリーズ、現代物の「モンタナーリ家の結婚」シリーズ。クリスマスがテーマのものはシーズナルロマンスと言われてます。時代も背景も違うクリスマスの作品を3つ紹介します。
薔薇と宝冠3部作
エリザベス一世の治世、16世紀アイルランドの3兄弟のロマンスを描いたシリーズ。「愛ゆえに」「復讐の使者」「この命果てるまで」から成ります。「愛ゆえに」はさちみ先生初めてのハーレ作品で、オリジナル作品「銀のヴァルキュリアス」の直後に描かれたせいか戦闘シーンが多いw ハーレなのにラブラブ成分よりも血生臭さがただよってますw 目元涼しく黒髪をたなびかせるヒーローのローリーが格好いいんですが、原作では看病されながらセクハラしまくりで活躍の場面少なかったらしいw イングランド兵に捕らえられ民衆に晒し者になって石投げられるところは漫画オリジナルなんですって。やっぱり分かってるぅ!(何がw?)ただタイトルが汎用性ありすぎでピンとこない。逆に2巻の「復讐の使者」はイメージしやすいけど、改変しまくって内容とタイトルが合ってない事態にw 2巻はローリーの弟コナーが主人公なんですが、暗殺しまくってた設定をなくしたのでこうなったとのこと。あと1作目の時点で続き描く予定はなかったのでどこにでもいるようなキャラデザにしてしまったというハーレあるあるも面白い。2巻は宮廷で権謀術数が巡らされるんですがコナーがヒロインにかける「どんなに憎い相手でも微笑みかけてそうやって戦うんだ」というセリフが忘れられません。さちみ先生の紡ぐお話は凛とした強さが根底にあるというか、生き方の哲学のようなものがバックボーンにあって、もちろんエンタメ性も優れているんだけど骨太というか、すごく励まされます。3巻は末妹のブライアナが主人公。お転婆すぎるブライアナと心に闇を抱えるキーンの組み合わせがツボ。どれも面白いので3部作まとめて購入するのがお勧め。巻末の後書き漫画も面白いし。あと、いつかエリザベス1世の話も描いて欲しい!さちみ先生とエリザベス1世、面白くならないはずがない組み合わせだと思う。
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c00278
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c00279
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c00280
モンタナーリ家の結婚シリーズ
これはイタリアの名家モンタナーリ家の兄と妹のシリーズ。ハーレクインの作家って大体米英出身らしいけど、イタリアやギリシャが舞台になるのが多いです。何故だろう?地中海=リゾートのイメージだから?特にギリシャ富豪がハーレクインのレギュラーメンバーなのですがギリシャってそんなに富豪が多い印象じゃないんだけどな…さて話を戻して、1作目は妹ヴァレンティーナの「イタリア大富豪と小さな命」。何と!病院のミスで赤ちゃん取り違え事件が発生して何ヶ月か我が子でない子供を育てた男女が本当の子が戻った後も(本当は会ってはいけないと病院には言われたが)交流を深め、いつしか愛し合うように…というお話。我が子じゃないと直感しつつ疑念を持つことそのものに自責の念を感じるヒロインがかわいそうで、そんな小さいうちから直感で察するものなのかな?とちと疑問に思いますがそれはともかく、自分の子ではない方にも同じように愛を注ぐヒーローとヒロインが温かくて、子供たちもまるで双子そのものでした。そしてヒロイン兄がめっちゃ格好いいんですが、予想通り第2作目のヒーロー。2作目は「イタリア大富豪と日陰の妹」。伯爵家の双子の妹アレッサンドラがヒロインです。見た目はそっくりでも対照的な姉と妹。同じ男性を好きになってしまうという因縁があり、ここでも2人はヒーローを愛してしまいます。モデルの姉が地味な妹をいじめる話か?と思いきや、姉デーアの気高さ誇り高さが本当に尊いです。銀ヴァルのリーリア思い出しちゃった。過去の事件から疎遠になっていたのに、一筋縄ではいかない姉妹愛にグッと来ます。どうやらデーアがヒロインの第3作があるらしいけどコミカライズはされてないのが残念。ヒーローは多分…あの人だな(キャラデザで何となく察してしまうお約束w)
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c03706
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c03797
クリスマス3作品
クリスマスがテーマなので勝手にまとめちゃいましたがどれも別作家の独立したお話です。
聖夜の魔法
クリスマスを控えたある日大吹雪でヒロインの車が立ち往生して遭難しかかり、一晩の宿を求め近くの邸宅を訪ねる…クリスマスものはなぜかこのパターン多いんですよね。お約束なのかな?そこでイケメンヒーローが山の中の邸宅or別荘に1人で住んでおり…あるある………ねーよ!とにかくヒロインがヒーローに助けを求めるんです。ここで日本人なら突然申し訳ありませんがどうか一晩だけでも…と下手に出ると思うんだけど、文化の違いなのか「こんな雪の中に閉じ込められて死ねって言うの?」みたいな感じでグイグイ迫るのが驚き。他の作品でもそうだったからお国柄なのかなと勝手に思ってる。助けを求めたのはヒロインだけでなく、境遇も年齢も違う者たちが吹雪がきっかけで集まって擬似家族のようになり彼らなりのクリスマスを祝うところが温かい。こういう話読むとあちらではクリスマスは特別なイベントなんだなあと思います。
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c02438
聖夜の契り
これは南北戦争後を舞台にしたヒストリカル。風と共に去りぬと時代が被ってます。南部のアトランタで兄妹のように幼少期を過ごしたヒーローとヒロインが主人公。南北戦争で全てを失い10年も疎遠になっていたが、はるか北の雪山で牧場を営むヒーローのところにヒロインが追いかけて来る、というお話。豊かで幸せだった子供時代と必死に働く現在、南部の肥沃な大地と雪に閉ざされた北部の山奥の対比が鮮やか。意地悪キャラも出てくるけどそれより2人の子供時代の描写が秀逸で昔が幸せであればあるほど失ったものの大きさと再会の喜びとお互いを思う気持ちが膨らむのです。終盤、ヒロインへの思いを自覚して必ず彼女を守ると覚悟を決めたヒーローの表情がめっちゃ男前なので見てほしい!
https://www.harlequin-library.jp/book/comic/id/c04492
サタンと貧しき娘
産業革命の頃の英国が舞台。貧しい労働者階級の出身ながら機織り機を開発して財を成したヒーローが工場と屋敷を買い取る。その屋敷には不思議な伝説があって…幻想と現実、過去や未来を行き来しながらあるべき所へ物語が収束していく流れは正にディケンズの「クリスマスキャロル」をなぞっています。ハーレクインはハッピーエンドがお約束と何度も述べてるけどその前提を逆手に取った漫画ならではの仕掛けも用意されていて…げふんげふん!ネタバレになるからとにかく読んでとしか言えない!こんな仕掛けができるのはさちみ先生ならではと思う。正に職人技。