「うたかたのオペラ」感想

数日前に見たのだけどしばらく余韻に浸って、ブログになんで書こうかななんて思いを巡らせてました。そのくらい忘れがたい印象を残す作品が「うたかたのオペラ」。でもいつまでも引きずっていたら公演終わっちゃった!内容忘れちゃう!という訳で感想書きますw ホント自分の海馬当てにならないので。

「あの素晴らしい愛をもう一度」で有名な元ザ・フォーク・クルセダーズの加藤和彦さんが1980年に発表したアルバム「うたかたのオペラ」などの楽曲を使い、第二次世界大戦期の満洲(らしきところ)を舞台にしたレビュー作品。初演は2009年で紫吹淳さんが主演。北翔さん、宝塚時代の大先輩である紫吹さんがやった役を演じること多いですよね。先日はコンサートで共演もしてました。深く尊敬しているのが伺えます。

簡単なあらすじ。1人の脱走兵が偶然逃げ込んだのはレビュー小屋「シャトードレーブ」。そこには歌姫メイファを始め道化師のドクトル・ケスラー、社会から見放された身寄りのない座員たちがいて、戦争の狂騒を一瞬でも忘れさせる夢のようなレビューを夜な夜な上演していた。彼らに匿われた脱走兵は一緒に舞台に立ちそこで暮らすことになるが、シャトードレーブにも戦禍が迫り、やがて敗戦を迎えることに。

第二次世界大戦期の満洲をモデルにしてるのは明らかでメイファもドクトル・ケスラーも実在の人物がモデルなんですが、別に歴史を知らなくても十分楽しめます。メイファのモデルは李香蘭と川島芳子で、表の顔は多くのファンを持ち男装もこなす華やかな歌姫、裏の顔は滅んだ大国の子孫でアマカス(ドクトル・ケスラーと同一人物)の指示で暗殺を請け負うスパイ。アマカスは「元軍人で甘粕事件により服役したが数年で出てきて満州に渡った後は芸能会社の社長をしつつ裏ではスパイ活動をした」という経歴の甘粕正彦がモデル。しかしそんな歴史的背景を知らなくても、いやむしろ劇中ではふわっとしたファンタジーに抑えているこそ、彼らの思いが現代に生きる私たちの胸を打つのかもしれません。新帝国建設という「うたかたの夢」を見ながらも敗戦と共に敗れ散るメイファとアマカス(ドクトル・ケスラー)、恋も知らずに死地に送られようとしながらも必死で逃げ後ろめたさを背負いながら生きる逃亡兵、貧困や半端者ゆえ社会に見捨てられながらもメイファに拾われ戦火を潜り抜ける座員たち三者三様の生き様が余すところなく描かれる脚本もよかったです。

北翔さんのメイファなんですが、これがむっちゃいい!神々しくて後光がさすくらい美しかったです。黒燕尾で登場したかと思うと次の場面ではホットパンツ姿で歌い踊る。美しいおみ足があああっ!去年から今年にかけておみ足祭りで眼福であります!他にもチャイナドレスや軍服などなど出てくるたびに衣装が変わるんです。「メイファきせかえ」とか作りたくなるレベル。彼女のスタイルの良さが引き立つ衣装ばかりで、特に最期のシーンのトレーンが長い黒のベルベットドレス(30kgだって!!)は演出も相まって語彙が追いつかないほどふつくしい。階段に波打つトレーンすら絵になってました。

もちろん歌も言わずもがな。加藤和彦の「うたかたのオペラ」は1920年代のベルリンをイメージしたコンセプトアルバムらしいけど、エキゾチックな雰囲気のあった満洲のイメージにもぴったりです。昭和らしい湿度を含みながら都会的で洗練されたメロディが今でも斬新で全然古びてない。劇中で北翔さんが歌うとこれがまた違った印象になるんです。劇中で心情を切々と歌い上げることもあればレビューの中で歌われるものもあり。その完成度から芸においては一切の妥協をしない人だなというのが改めて伝わります。加藤和彦以外の曲も使われていて、有名な「蘇州夜曲」もありました。これが本当よくてですね、昔の歌い方に忠実で最初聴いた時そう来たかとちょっと驚きました。家帰ってからYouTubeで他の人のも聴いてみましたが引けを取らないくらいよかった。いつかアルバム作ることがあれば収録して欲しいな。他には、クリスマスソングにもなっている「リトル・ドラマー・ボーイ」(ラパンパンパンってやつね)も1幕の終わりに不穏な予感を感じさせるような、効果的な使われ方をしてました。

これはメイファありきの舞台で北翔海莉が芝居歌ダンスと三拍子揃ってるだけで成功が大体約束されたもんなんですよね。だから彼女目当てで行った私は大大大満足。ただ、一つ注文を付けるとしたらドクトル・ケスラーがもっと濃くてもよかったかなーと。道化師ならもっと露悪的になんなら白塗りしてもよかったのよ?それだと小劇場系みたいなアングラさが出てしまうけど、私はアクが強いのも好きなので!会場もこじんまりとしてて演目の雰囲気に合っていたし、ここは少し悪趣味風味を足した方が光と闇のコントラストが映えたんじゃないかなーなんてことを個人的には考えました。だって北翔さんはそっちの引き出しは持ってないもの!ラストでメイファが「エログロナンセンスばかりで歴史に残るようなものは残せなかった」と自嘲混じりに言う場面あったけど、いやいやいやアナタの芸は真面目でお行儀がいいメイン通り路線ですから!と心の中で突っ込んでしまったw だからドクトル・ケスラーに裏ぶれた裏路地風味を請け負って欲しかったかも。その方がアマカスとのギャップも引き立つと思うんだよなー。北翔さんと中村誠治郎さん、「ふたり阿国」でも夫婦役だっただけに息も合ってたからそこが惜しかったかも。

私の好みは置いといて、とにかくいい舞台だったので、コロナ禍で遠出できない人が多い今の時期に上演したのがもったいなかったと思います。映像化は無理らしいのできっと1年後くらいに再演するんじゃないかな?と勝手に予想。こんな時期じゃなければ私も追いチケしたかったもの。北翔海莉のメルクマール的な作品として語り継がれるような作品だったと思います。ええもん見れてよかった!これだから北翔さんのファンはやめられないぜ。

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