「壬生義士伝」感想

前日の「オン・ザ・タウン」に引き続き2日連続で観劇…更には4日前に牡丹灯籠…一週間に3回も!!我ながらドン引きですよ!放蕩三昧でバチが当たりそう!でも、誰にも聞かれてないけど弁解させて貰うと、当初7月の予定は上旬の「王様と私」と下旬の「オン・ザ・タウン」の2回だけだったんです(それでも多いけどさ)。まさかクラセンと蘭の間は何もないだろうと思ってたら働きすぎでお馴染みの北翔さんなので牡丹灯籠が入り、そして今回の雪組。前回のファントムがよかったんでまた雪組を観たかったんですが、ファントムの時目を血走らせて全方位に網をかけていたのが今回は油断しまくり、それでも複数応募したもののことごとく外れてトホホと呟いたところ幸運にもお誘いが。(どうしよう…連日になってしまう…でも一度は観ておきたいし…いやでもやっぱり……………)と一瞬悩みましたがせっかくのチャンスなので「行きます」と即答しました。そんな前置きはどうでもいいので感想に移りますね。

私今回とんでもない大失敗をしでかしまして、何とハンカチ忘れた!!悲劇オブ悲劇と聞い ていたのにそんな日に限って忘れてしまって、でも滅多なことでは泣かないからまあいいやとタカをくくっていたところ他の方と同じくグスングスンですよ!周り皆鼻すすってたし。脱藩して新撰組行く頃からもうヤバかった(早っ)。最後の頃はティッシュ取り出そうにもガサゴソして迷惑かなと思い懸命に手で涙を拭ってました。

冷静に考えると脚本や演出はもうちょっとやり方あったかなーと思わないでもない。話詰め込み過ぎでバタバタしてて暗転も多かったし。朴訥とした貫一郎がバッタバッタ斬り倒して無双するシーン欲しかったなとか(皆無ではなかったけど言葉で強い強い言われるより実際示して欲しかった)、仕送りするためなら守銭奴と陰口叩かれるのも厭わない程家族のことを思っていたのになぜ朝敵となった後も新撰組に残ったのとか(武士の義理とか何とか言ってたけど家族第一じゃなかったのか?)、みよとのお見合いが一瞬で終わってしまってあのシーン必要だったの?とか(綺麗な着物を着た真彩さんが見られたのはよかったけど)、次郎右衛門が切腹しろと言うシーンもうちょっと尺あってもよかったかなとか(あれでも十分次郎右衛門の苦悩は伝わりますけどね)とかまあ色々。でも何より時代の波に飲み込まれて翻弄される人間たちの生き様死に様に感情移入してグスングスンですよ。死ぬ直前まで仕送りのこと考えていて、こんなの泣くしかないじゃん、ズルい!

望海さんの役ってある意味すごいですよね。ちっともトップぽさがない。いつでも誰にでも平身低頭で床に這いつくばってお金をかき集めてとても泥臭い。宝塚のお芝居ってトップにはトップに相応しい役というイメージあったんですけど今回その定型から大きく外れています。でも彼の凄さって内面から来るものなんですよね。金がないことで一度地獄を見たから、家族を養うためなら人を斬ることだって躊躇しないしどんなに守銭奴とバカにされようと頓着しない、その壮絶とも言える信念に周囲も段々と認めざるを得なくなってくるわけで。これまでトップの傍らで様々な役をこなして来たからこそこなせる役なのかなとぼんやり思いました。

それに対し、真彩さん演じるしづは余り活躍の場がありませんでしたね。だから京都の裕福な娘と二役させたのかなと思うくらい。これ当時の女性の地位の低さをそのまま反映してるなと思いました。女性と言っても一方で鹿鳴館にいるような人たちは最先端の西欧の文化を取り入れて外交を担う戦力となったけど、身分が低く貧しくて学もない人はひたすら愚直に耐えるしかなかったということですよね。最期も「後に肺を病んで死んだ」とナレ死だし、当時は歴史に埋もれたこういう人が多かったでしょう。ただ娘が看護師になって次郎右衛門の息子と結ばれたのは次世代への希望で、おそらく次郎右衛門の家族が父親のいなくなった一家に便宜を図ったんじゃないかなと考えました。

望海さん始め皆よかったけど、特に今回は朝美絢さんが気になりました。先日のFNS歌謡祭で前回月組として出演して以来再び話題を集めた彼女、私も見ましたけどやはり目立ちますよね。自然と目が引き付けられてしまう。でもお芝居だとまるで印象が違うんです。なぜか癖のある役がハマる。前回の「ファントム」では、苦労知らずの貴族の坊ちゃんのシャンドン伯爵はキラキラオーラ振りまく彩凪さんのほうが合ってた。しかしショレは朝美さんの方がよかった。20世紀号のオーエンもよかった。ショレもオーエンも本来おっさんの演じる役でタカラジェンヌのイメージとは程遠いんですが、なぜかビジュアルを褒められる朝美さんがやるとハマるんです。思えば「ひかりふる路」のサンジュストも超絶美男子ですけどかなりくせ者でしたよね。私は映像でしか見てないけど盲目的にロベスピエールを崇拝する狂気をはらんだ視線が癖になりましたw

さて話を本題に戻しますが、朝美さんは今回斎藤一の役でして、私は新撰組の知識ほぼゼロで斎藤一はるろうに剣心から知ったクチだけどwかなり目立っていました。出番が多いと言うだけでなくやっぱりうまいから印象に残るんだよねえ。愛し愛されることに何の期待もせず死に場所を求めるために新撰組にいるような影のある男が、遠く離れた家族のためにせっせと仕送りを続ける鈍臭い貫一郎と出会う。決定的にウマは合わず最初は斬り殺そうとしたが(これひどすぎるよね?)貫一郎の剣の腕は認めざるを得ない、何だかんだあって終いには「自分はひもじいの慣れてるから」と最後の握り飯を渡され「そんなこと知ってたら食べなかった!」と言うんです。終始冷徹な態度で回想ですら棘のある言い方なのに、貫一郎に対する認識が変わるのが手に取るように分かるのは彼女が芝居巧者だからなのかなと思いました。ただこのうまさって宝塚的にはどうなんだろう?とちらと思いました。彼女はビジュアルもいいし人気もあるし実力も穴はないから安泰だろうけど、ただでさえ95期がひしめき合っている上に、彼女の「癖のあるうまさ」がトップ向きではないと評価されることってゼロではないのかも、と思ってしまうくらいおかしな表現だけど私の目には魅力的に写りました。

本題と関係ないところでは、冒頭の鹿鳴館でダンスの練習をするシーンが最近観た「王様と私」を彷彿とさせるなとか、貫一郎が斎藤一に「ホントはお前がやったんじゃね?」と言うシーン刑事コロンボみたいだなwとか色々あるけど、キリがないのでショーの感想に移ります。と言っても顔と名前の一致率が低いので「ここのシーンのあの人がねー」と言えないし、情報量が多すぎてよく覚えてないし、結局「楽しかったー」としか言えないんですがw ショーがあってよかったよね!お芝居を観た後の気持ちのままじゃ帰れないもんw 幕間にお弁当食べながら「このおにぎり貫一郎たちに食べさせてあげたい!」って申し訳なく思った程だしw 

ショーはあっという間でした。大階段が出てきたところで「えっもうそんな時間?」って思ったほど。次から次へと畳み掛けるように見せ場が繰り出されて退屈する暇がありませんでした。ミュージックレボルーションって漠然としたタイトルだけどフラメンコ(風)ありクラシックありジャズありと、いろんなジャンルから取り入れてました。どれもよかったけど、というか情報量が多すぎて記憶が曖昧だけどw、パッヘルベルのカノンの場面がよかったなあ。戸川純の「パンク蛹化の女」を少し思い出したのは私だけでいい。2階席から観たのですけど映像で見るのと違ってフォーメイションが分かるのがいいですね。足が長い人はどんな角度から見ても長いのだなあと思いましたw 彩風さんのことですけどw 歌うまコンビってデュエットダンスでも歌わされてしまうイメージなのですが、今回はリストの愛の夢に乗せてたっぷり踊っていました。歌う場面は他にいっぱいあるんだからダンスを見せてくれよ!って思いますものね。トップコンビだけでなく色んな人に見せ場があるのもいいです。お芝居もだけどオリジナルだと役を増やしたり当て書きできるのが長所だと思います。あと大声では言えないけど視覚から得る情報量が多すぎて映像で見るより歌のゴニョゴニョさが分かりにくくなるなという知見も得られましたw

思えば宝塚のショーを生で観るの初めてなんですよね。映像だといくつか見ましたが途中で飽きてしまったものもあって、もしかしたらショーは生で見てこそなのかもしれません。そうこう考えていたら北翔さんの「THE ENTERTAINER!!」を生で観てみたかったなあと思いました。特に鏡を背景にした黒燕尾のシーン。ああいうクラシカルなの好き。あのショー自体彼女にしかできない演目ですよね。少しずつショーの楽しみ方も分かってきたのでまたぼちぼち観ていこうと思います。

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